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税理士や税理士補助(税理士事務所スタッフ)の年収はいくら?

税理士の資格や職業を紹介している書籍や、ビジネス系の週刊誌の「食えない会計士・税理士」という特集には必ずと言っていいほど税理士の年収について記載されています。

難関資格なので、資格に挑戦する前にその努力に応じたリターンがあるのかどうか、知りたい人が多いのもよく分かる話です。

ただこれらの数字は、実は税理士事務所に転職する人にとってはあまり参考になりません。なぜなら、税理士事務所で働く人の大多数が、税理士の資格を持たない「税理士補助スタッフ」だからです。

この記事では、税理士の年収と、税理士事務所の一般職員である税理士補助スタッフ(つまり税理士資格を持たない方)の年収の両方にスポットを当てて解説していきます。

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目 次

1 税理士の年収分布と平均年収

2 税理士補助とは? 会計事務所スタッフの平均年収

3 500万円・700万円・900万円の年収の壁

4 税理士試験科目合格数と年収の関連性

1 税理士の年収分布と平均年収

まず「税理士」として国家試験に通り、税理士登録している方の年収を見ていきます。こちらはデータも多く、しっかり調べればほぼ正確な金額が確認できます。

数字を見る前にひとつだけ注意しなくてはいけないのが、税理士の登録方法には3つの種類があり、その分類によって大きく年収が異なるということです。

具体的には、「開業税理士」「社員税理士」「補助税理士」の3つです。

1-1.補助税理士

このうち、いわゆるサラリーマン的な働き方に当てはまるのが「補助税理士」です。ちなみに、後からでてくる「税理士補助」とはまったく別物ですのでご注意ください。税理士補助とは、主に税理士資格の無い方が税理士事務所で働く際の職種や仕事内容の名称というような意味で使われます。それに対して、補助税理士は税理士の登録形態の話です。

税理士として就職・転職活動をする方の役に立つのはこの補助税理士の年収でしょう。日本税理士会連合会が、この補助税理士だけの年収についてデータを集計しています。

 

給与収入金額(補助税理士)のグラフ

 

日本税理士会連合会によると、補助税理士の給与収入金額は、「700 万円以下」が最も多く、その後「500 万円以下」、「1,000 万円以下」と続いています。これらを合わせた『300 万円超~1,000 万円以下』は約80%弱であり、過半数を大きく上回っています。なお平均収入金額は約 597 万円でした。

別のデータでも確認してみましょう。一度は皆さんも耳にしたことがある株式会社カカクコムが運営する、インターネットの求人情報サイト「求人ボックス」はここ最近よく見るようになりましたが、そのサイトによると税理士の年収は次のとおりです。

 

税理士の年収のグラフ-求人ボックス給料ナビ

 

平均年収が、日本税理士会連合会のものと比べて100万円以上低いようです。不安なのでもうひとつ調べてみましょう。

 

税理士の年収のグラフ-Indeed給与

 

こちらはIndeedという世界的に有名な求人サイトです。平均年収は日本税理士会連合会の数字とほぼ一緒になっています。私の感覚値とあわせても、日本税理士会連合会のデータがかなり真実に近いように思います。

求人ボックスは、まだデータのサンプルが足りていないか、もしくは積極的に利用している会社がまだ少ないと思われるので、大手法人の数字が拾えていないのかもしれません。求人ボックスもIndeedも転職の意味合いで集計がなされているので「補助税理士」の年収とは明記していないですが、基本はこのデータの読み方で間違っていないはずです。

補助税理士の年収をご覧になってどんな印象を持たれたでしょうか? 実務経験と年齢にもよりますが、上場企業と遜色ないか、少し低いくらいのイメージでしょうか。難関資格に通った割に、と思うかもしれませんが、非上場の中小企業と比べれば、だいぶ安定感のある金額ではないかなと思います。

1-2.社員税理士

続いて「社員税理士」を見てみましょう。社員税理士とは、税理士法人の「パートナー税理士」とか「役員」と呼ばれる人のことです。税理士法人において代表者は「代表社員」の肩書ですのでいわゆる創業者税理士もここに含まれます。

代表者と役員では収入面でも大きく差があると思いますが、いずれにしてもその税理士法人の意思決定に影響のある幹部税理士と思って下さい。

このデータを持っているのは私の知る所では日本税理士会連合会だけです。社員税理士の年収を見てみましょう。

 

給与収入金額(社員税理士)のグラフ

 

日本税理士会連合会によると、社員税理士の給与収入金額は、「1,000 万円以下」が最も多く、次いで「1,500 万円以下」、「700 万円以下」でした。これらを合わせた『500 万円超~1,500 万円以下』が約60%弱で過半数を占めました。
なお平均収入金額は約 886 万円であり、東京と関西の差に開きが少ないことも見て取れます。

1-3.開業税理士

最後に、「開業税理士」というのは個人事業の所長税理士、代表税理士のことをいいます。つまり、税理士法人ではなくて、税理士本人が個人経営をしている事務所の代表ということですね。毎年3月15日までに自分の所得税の確定申告をしています。

つまりすべてが独立している税理士で、この分類に雇われの立場の人はいません。年収のデータも基本存在せず、自分が稼いだ分だけ収入が増える社長・経営者の立場です。

お客さんが上手に獲得できなければ、自分の生活も困ることになるハイリスク・ハイリターンな選択肢と思われれるかもしれませんが、税理士業はそこまで毎月の固定費がかからないので経営が安定しやすい職業である上、そもそも税理士試験を目指す人にはここを目指して独立願望を持って頑張る方も多いので、その数は多いです。

1-4.BIG4税理士法人

税理士の形態ではないですが、上記の補助税理士の年収グラフに当てはまらない人たちがいます。それがBIG4税理士法人といって、世界的に有名な下記4つのいずれかの税理士法人に勤める人たちで、年収の水準がとても高くなっています。

  • デロイトトーマツ税理士法人
  • PwC税理士法人
  • EY税理士法人
  • KPMG税理士法人

BIG4税理士法人には共通した役職があり、スタッフ・シニアスタッフ・マネージャー・パートナーと順番に出世していく形です。それぞれの役職の年収目安は順番に、約500万円超・約700万円・約1000万円・約1500万円以上と言われています。
なかでもマネージャーやパートナーは、同じ役職でも年収に大きく開きがあるようです。

2 税理士補助とは? 会計事務所スタッフの平均年収

ではここからは、税理士の資格を保有していない「税理士補助」業務を行う、一般的な税理士事務所の正社員の年収について見ていきましょう。

まず、求人ボックスの年収データを調べてみます。

 

会計事務所スタッフの年収グラフ-求人ボックス給料ナビ

 

続けて、Indeedでも税理士事務所の一般スタッフの年収を調べてみましょう。

 

会計事務所スタッフの年収グラフ-Indeed

 

2社が公表する平均年収にそれほど開きはありません。税理士の資格を持っている人と比べて母数が多いので統計の数字にブレが少ないのだと予想されます。全国の平均年収はだいたい470万円~480万円程度ですね。

求人ボックスのデータを見ると、年収600万円を超える人の割合が極端に減っているのが分かると思います。しかし、700・800・900万円を超える人は少ないものの、0とはならず一定数はそれ以上稼いでいると見ることもできるデータではないでしょうか。

実際、平均値だけを見ても、今の自分の状況によっては平均年収にすら届かない状況の方もいれば、既に現職の税理士事務所でそれ以上稼いでいる方もおられるでしょう。

実務経験年数、年齢、地域、税理士事務所の規模といった条件にあてはめて、今の自分の年収が適正か? 転職すればいくらぐらいもらえそうか? ということをイメージする必要がありそうです。

3 500万円・700万円・900万円の年収の壁

さて、平均年収はデータを見てだいたい予想がついたことと思います。ここからは、自分自身が年収をいくら稼げるのか? ということについて詳しく見ていきましょう。

税理士事務所のスタッフの年収を分かりやすくお話しするには、どうすれば500万円・700万円・900万円を超えられるのか? を話したほうが簡潔に伝わると思います。

まず、税理士業界での実務経験がまったくないうちは500万円の壁を突破することはほぼ出来ないでしょう。先に5科目合格を果たしていたとしても、仕事を覚えるまでに高額の年収を支払える税理士事務所は少ないはずです。

逆に、科目合格が一切なくても実務で独り立ちできるようになれば、直接お客様の対応をすることで自分の売上が立つようになります。そうなれば、資格の有無や勤務先の税理士事務所の地域や規模にかかわらず、年収500万円の壁の突破は現実的になります。

700万円の壁は、努力や働きぶり以外にそもそもの前提条件が必要になると考えています。自分が税理士資格を持っていない・従業員が10名未満である・都心部の事務所ではない、これらの条件があるといくら努力しても年収700万円の壁を突破することはできない場合があります。
ただし、10名未満の税理士事務所でも、所長税理士の右腕として実務のほとんどを仕切れるようになって、所長税理士が営業・研修・ゴルフ等の遊興に割ける余裕時間を生み出してあげれるまでになれば、突破できないことはありません。このタイプは、税理士資格がなくても高額の年収をもらえることがあります。

最後に900万円の壁ですが、勤務先の税理士事務所自体がかなり利益を出していなければ、どのスタッフももらえない可能性が高いでしょう。事務所の収益性がもともと高いか、自ら新規顧客の開拓などを進めて会社に大きな利益をもたらした場合にようやくチャンスが見える金額です。

ただし、都心の大手税理士法人に勤めている税理士有資格者や、支店の経営を実質的に取り仕切っているような人であれば十分可能な年収です。

最終的には、自分で独立するか、税理士法人の要職まで出世するイメージをもたれている方も多いでしょうから、自分の希望の年収と上記の現実をすり合わせて、キャリアプランを練っていくと良いと思います。

会計事務所求人名鑑というサイトに書かれていた年収目安のコメントにほぼ私も同意見でしたので引用します。

  • 年収500万円の税理士
    税理士になればまずはここまでは実現できる水準
  • 年収500万円~年収800万円の税理士
    管理職になるか、中堅以上の会計事務所などに勤務すれば実現できる水準
  • 年収800万円~年収1,000万円の税理士
    中堅以上の会計事務所の管理職、大手会計事務所の準管理職になれば実現できる水準
  • 年収1,000万円以上の税理士
    中堅会計事務所の幹部、大手会計事務所の管理職、または、独立をある程度成功させることによって実現できる水準

税理士業界にはじめて転職してくる方などで主に初任給について詳しく知りたい方は税理士事務所の給料・年収はいくら?|初任給から10年勤務後まで予想の記事に掲載していますので、参考にしてみてください。

4 税理士試験科目合格数と年収の関連性

税理士資格の有無で年収に差が出るというのは上記のとおりですが、ただ資格があるから年収が高く、資格がないから年収が低いという単純なものでもありません。

一番はその税理士事務所・税理士法人のトップの考え方が大きいと思います。税理士法人の社員税理士は「無限責任」と言って、会社の損失に対して大きなリスクを背負っているため年収が高くなる傾向にあるのは間違いないですが、それ以上に組織運営における「仕事の能力」を評価して、税理士有資格者よりも高額な年収を無資格者に支払う方針の組織も存在します。

次に、税理士試験の科目合格と年収の関連性について考えてみましょう。これについてはあまりはっきりしたデータがあるわけではないので、他の税理士事務所の求人ホームページに記載されている情報や、私の友人の開業税理士数名から聞いた話になります。

まず、年収より先に大手税理士法人は、求人応募の条件に「税理士科目合格●科目以上」としていることがあります。つまり、科目合格がなければ入社すらできないというわけです。

しかし、この流れはここ5年程度で大きく変わり、BIG4税理士法人でも4科目以上だったのを2科目以上に引き下げるなど大きく緩和しています。税理士試験の受験者数が大幅に減り続けているので、人手が足りないというのが本音でしょう。中小以下の規模の税理士事務所では、ほとんどの事務所で求人応募条件の科目合格というのは見かけなくなっています

新型肺炎であらゆる業種がダメージを受けた今後、税理士業界における人材の需要と供給がどう推移していくかは分かりませんが、税理士業は経営的な直接ダメージがかなり少ないビジネスと言えるので、今後も求職者の売り手市場が続くことが予想されます。

科目合格している人としていない人の年収差ですが、分かりやすいのは科目合格手当のように明確に給与体系に組み込んでいる税理士事務所です。ただ、科目合格手当を設定している事務所はかなり少ない印象で、さらに設定している所でも月額数千円程度と聞いているので、代表税理士の気持ちを代弁すると「それよりも実務の仕事を頑張ってくれ」といった所でしょう。

経営者であれば税理士事務所に限らなくても、スタッフの年収を決めるのはあくまで「働きぶり」を評価する人がほとんどでしょう。つまり、科目合格が年収に与える影響は大きくないように感じます。

ただ、一つ科目合格が大きく影響を与えるものがあります。それは「採否の判断」です。税理士試験の受験をするということは税理士業界でやっていくという決意を持って、1年以上の時間とお金と意欲を注ぎ込んだという証明です。
実務経験を超えるものではありませんが、たとえば同じ実務未経験者どうしで2人の求職者のうち1人を選ぶなら、よほどのことがない限り科目合格者を採用するでしょう。