体験談インタビュー 2
公務員(国税専門官)から転身した桑原弾さん
私の前職は国税専門官です。国家公務員2種に相当する職員で、最初は税務署に配属されますが、出世すると国税局やその他の省庁に勤務することもあります。
税務署の仕事は、毎日のように納税者のもとへ行って、税金をごまかしていないか、計算間違いがないかどうかを調査する仕事です。
真面目に納税している人のためにも、脱税している人や計算間違いをしている人を見つけて正すという使命感のある仕事と言えます。
私がその仕事を辞めたのは、税理士の資格を取って独立したいということと、日々仕事で会う相手との立ち位置を変えたかったからです。
相手との立ち位置というのは、税務署の場合は「納税者から税金を徴収する税務調査官」で、税理士事務所の場合は「経営者の税務会計をサポートする税理士補助者」ということです。
納税者からすれば、ミスを見つけられると税金を追加で徴収されるので税務調査官は「敵」に近い立場です。一方、経営者からすれば税理士事務所の担当者は、お金を払ってビジネスの成功を手助けしてもらう「味方」に近い立場です。
数十年以上働くことを考えた時に、味方と思ってもらえる人と毎日接することができる職業を選びたいと思うようになりました。
そこで30歳を前に退職し、税理士事務所に転職しました。
入社前は、資格を取って独立開業を目指していたものの、いざ入社後数年経って税理士試験に合格した頃には、独立しようとはあまり思わなくなっていました。
それは、同年代の大勢の仲間たちと切磋琢磨しながら成長できる今のような環境を、独立して自分一人で作り上げるのはかなりハードルが高いとわかったことが理由の一つです。税理士事務所を開業して10 人、20人以上の規模の事務所にすることは容易ではありません。
もう一つの理由は、大規模事務所のほうが自分の得意分野の仕事に集中できるとわかったことです。独立すると、集客、営業、採用、教育、実務等、経営の全分野を自分一人でやらなくてはなりません。しかし、弊社では得意な人が得意な業務を役割分担しています。
税理士業界で働く年数が長くなり、他の多くの税理士事務所の情報や、独立開業した友人の税理士の話を聞けば聞くほど、独立開業の良い面と悪い面を冷静に見られるようになった気がします。
そして、良い面も悪い面もすべては自分が何を求めるかによって変わります。そう考えると「独立開業することも、勤務し続けることもできる」という選択肢を持てることこそ、税理士の素晴らしさだと思います。