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税理士事務所の仕事と一般企業の経理部の仕事はどう違う?

簿記の資格を活かしたい、経理の仕事に携わりたいと考える方が就職先を探す際のよくあるお悩みに、税理士事務所にしようか、一般企業の経理部にしようかというものがあります。

両者の一番の違いを端的に表現すると、一般企業経理は「会社に就く」のに対して、税理士事務所は「職業に就く」ということです。

言い換えると、「その会社」のルールを覚えて順応していくか、全国共通の「税務会計」のルールを覚えて順応していくかということです。

この違いは両者のクライアント、つまり「誰に向けて働くか?」を見比べるとわかりやすいです。

一般企業の経理職は、自社の経理業務のみに携わります。グループの系列会社の経理もまとめて見ることはありますが、いずれにしても自分が勤務している企業のために、素早く、ミスなく、定められた手順どおりに業務を進めることが求められます。

これに対して、税理士事務所の職員は、クライアント企業の経理業務に携わります。クライアントのために、素早く、ミスなく、会計のルールどおりに業務を進めることが求められます。税理士事務所は有料サービスとして、第三者に対して経理業務を提供しているのです。

一般企業の経理職は、もし社長や上司から業務手順について特別な指示があれば、その指示に従って業務を進めます。なぜその経理方法なのか? 税務署や金融機関に見せても問題ない方法なのか? ということを経理職の立場の人が考えることはなく、会社が決めたルールに従って作業を進めることになります。

これが「会社に就く」という意味です。

一方、税理士事務所の職員は、クライアントの経理方法が全国共通の税務会計ルールと違っていれば、全国共通のルールを正しいものとして修正していく必要があります。なぜなら、税理士事務所の経理処理に求められるのは、税務署や金融機関に見せても問題がない、法律のルールに則った会計データだからです。

日本全国どの税理士事務所でも通用する共通のルールを学んで、それに沿って作業を進める。これが職業に就く、という意味です。

もちろん、一般企業経理の仕事に就きながらでも、会計や税法のルールを学ぶことはできます。本人の成長意欲次第ではありますが、たとえば同じくらいの意欲を持った人が2、3年も働いた時に、日本全国どこでも通用する「手に職」と言えるスキルが身についているのは、税理士事務所に就職した人でしょう。

税理士事務所の仕事と一般企業の経理部の仕事はどう違う?

 

続いて、税理士事務所と一般企業経理の仕事内容の違いについて説明します。

まず、税理士事務所の仕事内容は、クライアントから届いた会計資料をもとに行う記帳代行、つまり会計ソフトへの入力作業です。それをもとに毎月レポートを作成したり、年に一度の決算書・申告書の作成などを行います。基本的には、これらの作業を一人あたり20社以上、同時並行で行っていきます。

一方、一般企業経理の仕事内容は、自社の経理作業のみです。だからといって、業務量が20分の1とか30分の1になるということではなく、次のような業務を行います。

  • 預金や小口現金の管理
  • 振り込みや支払い業務
  • 入金管理
  • 請求書の発行
  • 給与計算
  • 従業員の経費精算
  • 会計ソフト入力

税理士事務所と一般企業経理の違いはわかりますか? ここに挙げた業務の中で、税理士事務所の仕事内容とかぶるのは、基本的には給与計算と会計ソフト入力だけです。

会社内部で実際に商品が動いたり、現預金を動かしたり、経理書類を作成するのは企業経理だけの仕事です。

銀行窓口に行ったり取引先とメールを交わしたり、日々現場に近い仕事で忙しいため、一年に一度の決算処理や申告書作成など、難易度の高い業務は顧問税理士に外注することが多いのです。

その外注された決算・申告業務を引き受けるのが税理士事務所の仕事なので、税理士事務所のほうが専門性の高い仕事であると言えます。

 

一般企業経理のほうが明らかに良い点としては、従業員が100人以上など規模の大きな企業の求人募集が多いことです。規模に伴って初任給や平均年収が高くなり、福利厚生も充実している企業がたくさんあります。同年代のスタッフがたくさんいて、活気のある職場も多いでしょう。

それに対して税理士事務所は、全体の9割以上が10人未満の個人事務所です。所長税理士によって職場環境の良し悪しはかなり差があって、税理士になるまではむしろ仕事を教えてやっているんだから給料は最低限のままという事務所も珍しくありません。

スタッフの人数が少ないので、仲が悪い人がいればずっと居づらかったり、歳の近いスタッフが一人もおらず自分以外は高齢の人ばかりということもよくあります。

 

さて、税理士事務所の仕事と一般企業の経理部の仕事、どちらにも良い点と悪い点があることをご紹介しました。では、どんな人がどちらの就職先に向いているかという判断基準をお伝えします。

  • 将来自分が税務会計の専門家として、手に職をつけて働きたい。そのためには、待遇や職場環境が良いとは言えない状況であっても多少は耐えられる。
  • 一人前の実力がつくまでは、仕事が終わった後も自ら学ぶ気持ちがある。

このように積極的な意欲がある人は税理士事務所に就職することをお勧めします

最初はしんどいことも多いですが、一人前になった暁には、その後も転職の際に困ることがなく、努力次第では高収入を目指すことができるのが税理士事務所の仕事です。

逆に、そこまで仕事を頑張れないかも知れない、良い会社に巡り合って、休日と趣味に生きたいという人は、一般企業経理へ就職するほうがよいかも知れません。