AIの普及により、税務会計の仕事は近い将来なくなってしまうだろうと雑誌等で取り上げられる機会が増えています。
弁護士や社会保険労務士など資格業全般がそのように取り上げられていますが、中でも公認会計士・税理士の仕事は数字を扱う仕事ですから、コンピュータがもっとも得意とする分野のため、簡単にAIに置き換えられるのではと考えられているようです。
本当にそうでしょうか?
私たちは「そうではない」と考えています。事実、10年以上前からなくなると言われていた会計ソフトのデータ入力業務は、いまだに多くの企業から依頼がありますし、業務拡大を続ける勢いのある税理士事務所の数も増え、大手事務所の成長はむしろ加速しています。
また、経済情勢や取引の国際化・電子化などに伴って税法は毎年改正を繰り返し、年々複雑になっています。そうなると、税額計算はコンピュータが一瞬でできるとしても、どの数字をインプットすべきか、納税者にもっと有利な選択肢はないかなど、判断すべき項目はむしろ増えていきます。
お客様の要望を落とし込んで、求める結果への最適な判断を手伝ってあげることへ仕事の価値をシフトすることで、税理士はより欠かせない存在になることができます。
AIによってなくなる仕事の引用元として有名なのは、2014年に発表されたオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らによる論文ですが、その論文によれば、同じ資格業でも中小企業診断士はAIに置き換えられるリスクが低いとされています。
それは経理や決算申告のように完成形が決まっているサービスではなく、相談・コンサルティングという専門家の能力次第で結果まで変わるサービスをメインの業務としているという理由からです。
しかし、決算申告は誰がやっても同じ数字になるわけではありません。さらに、相談やコンサルティングは中小企業診断士の独占業務ではなく、実態としてはむしろ会社の経理状況を100%把握している税理士こそ、経営者ともっとも近い位置にいて、相談を求められる機会の多い職業です。
お客様の会社のお金の全貌を見ることができる税理士事務所の立場は、コンサルティングにおいて圧倒的な強みとなります。
AIの発展により中小企業診断士が生き残り、公認会計士・税理士が廃れるという予想は、資格を表面的に捉えただけの調査で、実態を正確に反映できていないと言えるのではないでしょうか。