税理士事務所の就職・転職情報サイト

会計業界で就職や転職を考えている人向けに会計事務所の実態をリアルに書いていきます。

相続専門・税理士事務所のスタッフの一日

この記事でわかること

  • 相続税理士事務所の一日のスケジュールが分かる
  • 相続税理士事務所の仕事の辛い所・楽しい所が分かる

今回の記事は、相続専門税理士事務所の一日のスケジュールというテーマで、相続税を専門とする事務所のスタッフがどんな風に仕事をして一日を過ごしているか、リアルな内容をお伝えします。

とくに、税理士事務所で働こうと考えている求職者の方や、税理士試験、相続税法の受験生の方に必見の内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

1.相続税理士事務所の午前中

早速、相続専門の税理士事務所の一日のスケジュールをご紹介していくのですが、今回、モデルケースとしてお話を聞かせてもらった人物は、前職が飲食店の店員をしていた方で、税理士業界未経験から弊社に飛び込んできて、現在、入社から約2年が経った、30歳の男性スタッフです。
入社前からファイナンシャルプランナー2級を持っていて、法律関係の職業に興味があったという方です。
その方の、実際の一日を詳しくインタビューしました!

午前8時30分 出社

定時の30分前に会社に到着しました。
まずは社内の顧客管理システムを開いて、相続税の申告期限が迫っている案件の進捗をすべて確認していきます。

その中から、自分が動くべきものと他のスタッフに進めてもらうものを確認し、自分が今日やるべきタスクは一旦紙に書き出して整理します。

申告期限が迫っている案件や、進捗がよくない案件を他のスタッフとも共有して、オフィス全体で仕事を進める優先順位を、皆で確認しておきます。

午前9時 お客様への電話・メール

その日やるべきタスクが決まったら、そのうちお客様に動いてもらわないといけないこと、戸籍や財産に関する資料の収集、預金の入出金の原因解明などについて、電話やメールで依頼していきます。

お客様は高齢者が多く、夕方以降は連絡が取りづらいので、朝お願いして、日中動いてもらえるように分かりやすくお伝えてしていきます。場合によっては、メールした後に電話して説明することもあります。

相続税の作業は、この資料収集次第で早くも遅くもなりますので、こちらからまめに連絡を取って、お客様が進めてもらいやすいように案内をしていきます。

午前9時30分 財産評価作業

相続税の作業は、法人税務と違って会計ソフトを入力することも、簿記の知識を使うこともありません。

主に、JDLの相続税申告ソフトと、㈱エッサムの提供する蔭地名人という便利な土地評価ソフトを駆使して申告書作成の準備を進めていきます。

相続税申告で一番時間を要するのは、それぞれの財産がいくらか?相続税法上の正しい金額を導き出すことで、これを財産評価と言います。
ほとんどの時間を、亡くなった方の財産評価に使います。主なもので言えば預貯金と土地です。

預貯金は亡くなった日の残高金額イコール評価額なので銀行からその証明書を出してもらえば一瞬で終わると思うかもしれないですが、生前にお金の出入りがあったりすると、他の家族への贈与がないかを確認したり、使い切ってないお金が自宅に残ってないかなどをチェックしないといけなくなります。そういうお金の出入りを過去5年分とかに渡って調べ上げていきます。

土地については、財産評価が難しいのはすぐに想像できると思います。

買い値、売り値、固定資産税評価額、不動産鑑定額などひとつの土地に色んな価格が混在するからです。

国税庁が発表する路線価という数字を使って計算することが多いですが、土地の形状によっては評価を下げて相続税を減らすこともできたりするので、法務局で地積測量図を取得したりして、なるべく低い評価で計算できないかと、慎重に作業を進めます。

午前11時30分 昼食

午後はお客様の来社予定があるので、ちょっと早めのランチです。男性スタッフは同僚数名と外食する人が多いです。

他には、お弁当を買ってオフィスのデスクでパソコンを見ながら一人で食べる人も多いです。

2.相続税理士事務所の午後

午後12時30分 来社面談

この日は相続税申告をご依頼頂いてから一ヶ月くらい経つお客様が、必要資料がだいたい揃ったということで、資料を持って会社までいらっしゃいました。

事前にお渡ししている資料収集リストと、持ってきて頂いた資料の突き合わせをしていきます。

まだ収集できていない資料があれば、どこでどういう手続をすれば入手できるかをお伝えし、期日を決めて動いてもらうように伝えます。

業務としては、相続税申告のための必要資料さえ収集できればよいのですが、高齢者のお客様は、相続について色々と分からなかったり、不安な気持ちで過ごされている方が多いので、相続人の皆様やそのご家族の話などを積極的にお話してもらって、安心して頂けるように努めます。

とくに、二次相続といって、今回亡くなった方の配偶者が亡くなるまでの間に、何かできる対策がないかとか、相続税申告の前に決めなければならない、遺産分割の方法などについては業務に直接関わることなので、お会いできたタイミングで一気に話を進めます。

被相続人が遺言書を残していなければ、相続財産をどう分けるかは相続人全員で話し合って決めなければいけません。

財産の配分自体は相続人の問題なので、私たちが首をつっこむことはありませんが、財産の配分方法によっては、相続税の負担が重くなるケース、軽くなるケース、数百万円単位で変動しますのでその考え方や計算方法などをお伝えすることがあります。

また、税金以外にも不動産や銀行口座の名義変更がまだのケースもありますので、相続全般のお悩みが解決できるようにコミュニケーションを取っていきます。

午後3時 検算

弊社では、評価作業を終えると、申告書を作成する前に別のスタッフに、財産評価の誤りがないかどうか、資料がきっちり揃っているかどうかをチェックしてもらいます。

この日は、他のスタッフの急ぎの案件の評価作業が終わったということで、すぐに私が検算をすることになりました。

検算の内容は、自分で評価作業をする時とほぼ変わりませんが、他のスタッフが財産評価とその根拠資料の整理を終えてくれていますので、よく間違えてしまう箇所とか、間違った時に相続税額が大きく変わってしまうポイントを重点的に見ていきます。

そうなるとやはり、土地の評価と預金移動のチェックがメインになってきます。
グーグルのストリートビューで対象の不動産をチェックして、それでも悩む場合は先輩に相談します。場合によっては、メジャーを持って現地まで足を運ぶこともあります。

預金移動は、被相続人だけでなくご家族の方の通帳を追加で収集してもらったりととにかく将来的に税務調査になったとしても、税務署につっこまれないように、きっちりと財産をチェックしておくというわけです。

午後7時 退社

この日は、そのまま他のスタッフの検算を2件終え、今日やるべきリストをすべて終えたら19時になりましたので、自分が今日一日に何をしたかという日報メールを書いて帰りました。

今は確定申告時期で、お客様の中には贈与税の申告や所得税の申告のご依頼も受けているので21時まで残る日もありますが、用事がある日は18時過ぎにすぐ帰ることもあります。

家に帰るとAFP、CFPの資格試験の勉強をしたり、読書をして過ごしたりしています。

3.相続税理士事務所の仕事の辛い所・楽しい所

相続専門の税理士事務所は、一般的な法人・個人のお客様を抱える税理士事務所と違って、お客様とお会いする頻度はそこまで多くありません。

ただ、新規のお客様の無料相談として、電話や面談の対応を任されるようになれば、お客様と会う機会は増えますし、そのための対応時間も長くなり、財産評価の作業をする時間が減ってきてしまいます。

そのあたりは、税理士事務所によっても違いますし、自分自身の社内での役割の変化とともに時間配分も変わっていくようです。

 

今回、モデルケースとしてお話を聞かせてもらった未経験から入社2年が経った、30歳の男性スタッフに、せっかくなので相続専門税理士事務所の仕事の辛い所と楽しい所を追加でインタビューしてみました。

相続専門税理士事務所の仕事の辛い所は、とにかく始めは何も分からなかったので、作業に時間がかかって、期限がある仕事もどんどん後ろ倒しになり、思い通りに進まないのが辛かったです。
ただ、先輩に聞くしか解決策がなかったので、何度も何度も先輩に聞いていました。同じことを聞いて、先輩に怒られることもたまにありましたが、処理を間違えてお客様に怒られるよりは100倍マシだ、と気持ちを切り替えてとにかく聞きまくりました。

相続税理士事務所の仕事の楽しい所は、お客様はいい人が多いので、やり取りしていて楽しいです。相続のことを何も知らないという人も多いので、自分のことをすごく頼って連絡してきてくれます。

その時に、自分の知識や経験をお伝えして「とてもよく分かりました。安心しました」という言葉を直接いただけるのは、この仕事のやりがいに繋がっています。

ほかにも、普通は覗けない他人の家の財産が、この仕事だからこそリアルに覗けるというのが面白いです。
不動産の評価までしますので、自分の知ってる場所がどれくらいの金額で評価されたり売れたりするのか、相続の周辺知識も身に付いてくるとどんどん面白くなってくる仕事です。

と、こんな風にインタビューに答えてくれました。
すごく落ち着いた雰囲気で、質問にも的確に答えてくれるので、高齢者の方にも安心してもらえるだろうなという印象を受けながら聞いていました。