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どんな種類の税理士事務所がありますか?

この記事でわかること

  • 基本となる総合型・税理士事務所の特徴が分かる
  • 特定の業種に強い税理士事務所の特徴が分かる
  • 顧客ニーズに特化した税理士事務所の特徴が分かる

今回の記事は、どんな種類の税理士事務所がありますか?というテーマでお伝えします。

とくに、税理士事務所で働こうと考えている求職者の方や、税理士試験受験生の目線から、
自分が成長するためにはどんな税理士事務所で働くべきか?
どの税理士事務所を選ぶと、将来、どんなキャリアプランが立てられるか?
ということを踏まえて解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

1.税理士事務所の分類・種類とは

以前、Youtubeチャンネルのいろいろな税理士事務所の特徴という動画で一度、税理士事務所の分類については解説したのですが、そのときは、
税理士事務所を分類するのにもっとも重要な物差しは従業員規模専門分野です。
ということで、主に従業員数の多い少ないに着目して税理士事務所を紹介していきました。

今回は、主に仕事内容やその他の特徴に着目した税理士事務所の分類について解説していきたいと思います!

ちなみに、このテーマは、私の以前の動画のコメント欄にて、金太チャンネルさん、という視聴者の方から次のようなリクエストを頂いて作成しております!

税理士さんにもいろいろ種類があるようですが、たとえば、お医者さんにも外科・内科・眼科とかあるように、一般の人にもわかりやすいように、法人専門・個人専門・相続専門とか、他にもいっぱいあるものを教えて頂けるとありがたいと思います

ということです。金太チャンネルさん、コメントありがとうございます!

さて、税理士事務所の分類を紹介する前に1つお伝えしておきたいのは、初めて働く税理士事務所や、転職した2つ目の税理士事務所での働き方や、そこで得た実務経験と仕事のノウハウは、その後の自分のキャリアプランにも大きく関わってくるので、どの税理士事務所で働くかはとても大事ですよ、ということです。

例えば、弊社ベンチャーサポートで2、3年以上働いたのちに、退職して税理士事務所を開業している人が私の知る限り、全国で過去5人以上いるのですが、そのほとんどが、会社設立・起業家支援という弊社の特徴を、そのまま自分の事務所の特徴にして頑張っておられます。

なんなら、似た意味のカタカナの社名というところまで一緒です。

つまり、良くも悪くも、数年以上勤めた税理士事務所の影響は強く受けるものなので、自分の将来まで考えて、どのような税理士事務所で働きたいか?をイメージしてみてください!

2.基本となる総合型・税理士事務所

基本となる総合型・税理士事務所

まず、すべての税理士事務所の基本となるのが総合型といわれる「税金のご相談なら何でも対応します」というスタンスの事務所です。

仕事の範囲としては一番手広いため、大手の税理士法人はほとんどがこの総合型・税理士事務所に当てはまります。

では、個人の小さな税理士事務所は?というと、15年くらい前まではほとんどこの総合型でした。従業員の規模に関わらず、税理士と言えば、「税金のご相談ならどんなことでもお任せ下さい!」これが普通だったんです。

今でも、高齢の税理士さんはほとんどが総合型の事務所経営をされています。

これは、考え方が古いとかいうことではなくて、それで何も困ることなく税理士事務所の経営が成り立っていた時代だったから、と言えます。

今のように、オンラインで面談できたり、預金通帳がデータ化されたりしていない時代は、近場ですぐ会える税理士というだけで重宝されたので、事務所所在地がひとつの差別化になっていたんですね。

とはいえ、若い税理士でも所長税理士本人の人脈が豊富で、とくに集客に困らない税理士事務所であれば、この総合型の税理士事務所として独立開業されている人は多いですし、税理士事務所のスタンダードであることはこの先も変わらないでしょう。

 

総合型の税理士事務所に入社して働いた時に身につくスキルは、いろんな分野の税金や手続きについて幅広い実務経験が積めるということです。

個人事業主の確定申告や、中小企業の法人税・消費税申告を中心に、基本的なスキルが身につきます。

他の税理士事務所に転職しても確実に役立ちますし、将来的に自分が独立開業するときにも使える王道のスキルが身につくため、幅広いキャリアプランを立てることができます。

その反面、相続税の申告や、特殊な業種・形態の税務会計については、そのつど、書籍を調べながら手探りで進めていくような感じで、しかも年に一度とか、それぞれの業務が発生する頻度が少ないため、熟練することはありません。

3.特定の業種に強い税理士事務所

特定の業種に強い税理士事務所

次に特定の業種に強い税理士事務所について解説します。

医者や歯医者だけを顧客にする医業専門の税理士、不動産オーナーだけを顧客にする地主専門の税理士は古くからあったように記憶していますが、最近では、飲食業専門、美容業専門、そしてプロスポーツ選手や芸能人専門という税理士事務所まで出てきています。

有名なYouTuberで、ベストセラー「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の著者が経営する公認会計士山田真哉事務所のホームページを見てみると

芸能界・出版界などクリエイティブな職種に特化した会計士・税理士事務所です。
役者、アーティスト、作家、YouTuber等の会計・税務について豊富な経験を有しています。

と書かれています。

自分自身が税理士YouTuberとして広告収入を上げていれば、他のYouTuberの方も相談しやすいですよね!

そして、芸能人のお客様を獲得することで、YouTubeでコラボなどもできるようになるので、さらに自分のYouTubeチャンネルも伸びていくという風に、戦略的に自分の得意分野を作って、集客や紹介に活かしています。

税金と言えば近所の税理士に相談、という以上の情報がなかった時代は、事務所の看板を見てお客様が来ることもあったそうですが、インターネットが普及して、特にブログやメールマガジンで、誰でも安価に情報発信ができるようになった以降は、
自分はどういう強みのある税理士か?
報酬はいくらか?
ということを開示して、お客様から選ばれる必要がでてきたため、このような差別化が進んできました。ちなみに、集客のために専門とうたっているだけの事務所もあるので、実際にはそれ以外の業種のお客様もいることはあります。

 

お医者さんや地主さんの税務会計は、実際に一般企業とは異なる特例を検討しなければいけなかったり、消費税の処理がかなり複雑だったりするため、実務面では、一般企業の税務会計プラスアルファの知識が身につくでしょう。

その他の飲食業専門、美容業専門、芸能人専門、それ以外にもフランチャイズ専門、公益法人専門、なかには風俗業・キャバクラ・ホスト専門税理士などもいますが、このあたりは主に集客のしやすさや、業務効率化のしやすさの為の業種特化なので、特別な税務スキルが身につくわけではありません。
ただ、同業の話題が豊富になるので、お客様にも有益な会話が提供できるようになるでしょう。

総合型の税理士事務所に比べると、業種が偏ってしまうため、その専門業種には詳しくなりますが、その他の様々な業種の税務会計に触れる機会が減ってしまうので、将来のキャリアプランを立てる上でやや知識の偏りができてしまうかもという懸念はあります。

4.顧客ニーズに特化した税理士事務所

顧客ニーズに特化した税理士事務所

続いて顧客ニーズに特化した税理士事務所について解説します。

お客様が税金のことに困って、税理士に相談したいと思うタイミングはいくつかに分類できます。

たとえば、

  • 確定申告を任せたい時
  • 起業・会社設立をしたい時
  • 身内が亡くなって相続が発生した時
  • 銀行から融資を受けたい時
  • 税務署から税務調査の連絡が来た時
  • 社長を退任して事業承継したい時

などが代表的なタイミングです。

この、お客様のニーズに特化した強みを持つ税理士事務所も近年増えてきています。

これらは総合型の税理士事務所でも対応できる内容なのですが、あえてどれか一つに絞ることで、集客をしやすくすることと、専門性を高めてノウハウを蓄積していく狙いがあります。

なかには高額な相続税対策や、M&A、海外進出など、総合型の税理士事務所では手に負えない業務を手掛ける事務所もあります。

さきほど解説した、業種に特化することの狙いが主に集客・マーケティングなのに対して、顧客ニーズに特化することは、年数とともに税理士事務所内に専門性とノウハウがどんどん蓄積されていって、お客様へアドバイスできる内容や提供できる価値も高まります。

当然、専門性とノウハウはそこで働くスタッフにも蓄積されていき、顧客ニーズに対する引き出しは増えていきます。

ただ、特に相続税専門の税理士事務所など総合型の税理士事務所ではあまり経験できない業務の専門事務所になると、専門知識や実務経験の内容が偏ってしまうことになります。

自分の将来のキャリアプランが絞りきれているならそこを極めるのもありですが、そうでなければ、一般的な事業主の所得税、法人税、消費税の申告業務にどれくらい携わることができるかは入社前に確認しておいたほうがいいでしょう。

 

税理士試験に挑む人は、傾向的にこのような難しい実務を身につけたいという人が多いですが、難しい実務ができれば自然と集客できるわけでもありません。

ひとり税理士として独立開業を考えているなら、集客・マーケティングを学ぶこともすごく大事で、業種特化、顧客ニーズ特化、どちらの事務所にもそれぞれの学びがあります。