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税理士事務所で働くのに税理士資格は不要?資格なしでも活躍できる税理士補助の仕事

この記事でわかること

  • 税理士事務所で働くのに税理士資格は必須ではない
  • 税理士事務所での業務内容と仕事に役立つ資格がわかる
  • 税理士事務所の転職先の探し方がわかる

税理士事務所の求人採用募集を見ていると、「税理士補助」という募集を見かける事があると思いますが、税理士補助とは具体的にどのような仕事をしているのでしょうか。
知らないとわかりづらい税理士事務所の業務や働き方に関する内情をこの記事でお伝えします。

税理士事務所で働くのに税理士資格は不要?資格なしでも活躍できる税理士補助の仕事

 

税理士資格がなくても活躍できる?

税理士事務所を新しく開設するためには、税理士資格を保有していなければなりません。
税理士となるためには、税理士試験に合格し実務経験を積むなどの条件をクリアしなければならず非常に高いハードルとなっています。

しかし、税理士事務所で働く人の多くはこの税理士資格を保有してない、あるいは現在取得にむけて勉強中という方です。このような税理士資格をまだ持たない方は、税理士事務所でどのような仕事をしているのでしょうか?

実は税理士事務所の業務は、税理士が直接行わなくてもよいものが大量にあります。税理士法上、直接税理士が行わなくてもよいこの大量の業務を、税理士に代わってサポートするのが「税理士補助」と呼ばれる仕事です。
税理士が直接行わなくてよいと言っても、会計や税務の仕事に変わりはありませんので、簿記や税法に関する高い知識や経験を持った人ほど活躍できる仕事なのです。

税理士補助の仕事とは

税理士の有資格者しかできない独占業務は「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」とされています。しかし、これらの元となるデータの作成や、根拠書類の作成・整理、お客様からの一般的な質問・相談など膨大な業務が税理士事務所では発生します。

会計処理および申告書作成準備

まずあげられるのは、顧客から預かった書類の会計処理業務です。
顧客で伝票を作成している場合もあれば、何も作成せず領収証や通帳のコピーを預かってくる場合もあります。
このような書類を事務所で会計ソフトに入力し各種帳簿を作成するのは、税理士補助の重要な業務となります。

一年間の会計処理が終われば決算業務をし、さらに税金の申告書の作成準備まで任されるようになります。法人税や所得税、消費税の申告書は年に一度必ず作成するため、その業務を行う必要があるのです。

巡回監査

税理士業界でよく使う言葉で、巡回監査とはお客様の会社を月に一回など定期的に担当者が訪問して回ることを言います。
TKCという団体に属する税理士事務所が使った用語ですが、今は一般化して、訪問するか来社してもらうかに関わらず、税理士事務所の担当者が定期的に顧客と面談することをこう呼ぶこともあります。

事務所内での経験を積むと、顧客の事務所を巡回監査にまわることもあります。
最初は所長や先輩職員と一緒にまわり、そのノウハウを吸収することとなるでしょう。
ある程度の会計や税務の知識が求められますが、それ以上に顧客とのコミュニケーション能力が重要となります。

金融機関の活用提案や提出書類のサポート

税理士事務所には、顧客と金融機関との面談に同席し、顧客の資金繰りに問題が生じないようにする役割もあります。
新たに借入ができる、より良い条件での借り換えができるなど、経営者の代わりに情報のアンテナを張って、経営に役立つ情報を経営者に提供することが重要です。
また顧客のキャッシュ・フロー状況をこまめに確認し、資金ショートしないよう常に資金繰りに目を光らせておく必要があります。

経営コンサルティング業務

経験を積むと、今後の会社の経営方針に関するコンサルティングを行うようになります。これは税理士事務所の方針やその人個人の能力にも依存するため、一律のサービスというわけではありません。

会計・税務といった税理士事務所の従来の業務は、会社で行ってきた経営の結果をまとめる仕事が中心です。しかし、顧客がより発展するためには将来の経営に関するアドバイスが不可欠です。
コンサルティングといっても、奇抜なアイデアで売上を大幅に上げたりということではなく、あくまで税理士事務所として、納税する額を最小限にとどめるとか、税務調査で追徴税額を指摘されないとか、融資を有効に使うといった、得意分野の知識を活かして経営者に喜んでもらうことがベースです。

税理士補助になった方・なる方が学ぶべき資格

税理士事務所で働くにあたって、採用面および業務面でこの資格を持っておいたほうが有利だというオススメ資格がありますので、こちらで解説していきます。

日商簿記検定2級(3級)

会計処理・会計ソフトを扱うのに非常に有益なのが、日商簿記検定試験の2級・3級の学習内容です。操作さえ覚えれば、簿記の知識がなくても会計ソフトは使えるのですが、裏で動いている会計のデータはすべて「複式簿記」というルールに基づいています。そのルールを理解しているかどうかで、単に記憶するか、意味が分かっているかという大きな違いが生まれます。

この業界で働くすべての人の大前提となる知識がこの複式簿記のルールで、それをもっとも効率よく学べるのが日商簿記検定と言えます。

税理士事務所で未経験歓迎の応募があれば、この業界を目指す意欲の証明にもなりますので、3級の合格でも、2級の不合格歴でもムダにはなりませんので、履歴書には必ず書いておきましょう。

MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)

税理士事務所での仕事には、エクセルで金額の集計を行うケースが多くあります。
エクセルは入力ミスの検証において、電卓よりも数段優れていて、業務でも使用することが多いです。
MOSの資格にこだわる必要はありませんが、エクセルの使い方について一度きっちりと学んでおくことはかなり有益です。その証明として履歴書でアピールできるMOSの資格は、目指す価値があるでしょう。

ファイナンシャルプランナー

税理士事務所の中には、保険代理店の業務を行っていたり、コンサルティング会社を別に持っていたりする場合もあります。
これが意味することは、税理士事務所のスタッフはお客様からそういった内容の相談を受ける機会が多いということです。
簿記や税法のように深く学ぶ資格学習と違って、ファイナンシャルプランニング技能士3級等の資格は、保険や不動産などお金に関する知識を横断的に広く学ぶのに適しています。

税理士事務所で働くうえで大事なポイント

税理士事務所の業務はすべて、顧客とのコミュニケーションから生まれます。
また事務所内での仕事を行う際も、所長や先輩職員の指示のもと動く必要があるため、社内でのコミュニケーションは欠かせません。 そのため、意外かも知れませんが、簿記や税法の知識で黙々と集中して作業をできること以上に、会話や意思疎通の重要性が高い仕事です。
どの仕事でも言えることかも知れませんが、まずはお客様の意図を汲み、社内でのスムーズな連携をできるだけのコミュニケーション力を備え、そのうえで簿記や税法の知識・経験が備われば、一人前以上の仕事ができるでしょう。

税理士補助として働くメリット

税理士として登録するためには「実務経験2年」という、試験合格以外の要件があります。つまり、税理士補助の仕事を2年以上行うのは税理士の資格を使う人にとって必須なのです。

しかし、義務としてその2年間を過ごすのはあまりにもったいなく、意識次第で素晴らしい知見を蓄えられる期間となります。
たとえば、税務調査の立ち会いや申告書の最終検算など、税理士の有資格者ならではの仕事を間近で見て学ぶ最高の教科書となるでしょう。業務としてそのための準備や手伝いをするわけですから、理解度や定着度も勉強で学ぶ以上のものとなることでしょう。税理士として、自分に足りない実力を身につける貴重な期間なのです。

また、税理士資格はその難しさから、実際には途中で試験を断念してしまう人も少なくありません。その場合でも、税理士補助として積んだ経験はその後に活かされます。
高い意識をもって身につけた実力と経験は、税理士事務所にとって高い価値を生みます。おそらく、弁護士事務所や司法書士事務所に勤める無資格者ではそうはいかないのですが、事務所内での準備作業・チェック作業の比重が高いことが、税理士事務所における無資格者の重要性を高めているのだと推測されます。
さらに、会計や税法の知識は全国共通なので、一般企業の経理部への転職も狙えるというメリットがあります。

税理士事務所の転職先の探し方

最後に、税理士事務所の転職先の探し方をご紹介します。
ここで紹介する以外にも、現在はインターネット等で様々な調べ方がありますので、並行して進めると、より良い事務所に出会う可能性も高まるでしょう。

インターネットで検索する

今や当然ですが、インターネットで直接社名を入力したり、「税理士事務所 転職」などと検索すれば、該当するホームページがたくさん見つかります。
スマホでこのように直接検索する方法もあれば、リクナビNEXTやエン転職といった求人サイトにログインして、求人サイトで検索する方法も便利です。
求人サイトでは、条件設定の欄に「実務未経験」とか「資格不問」などの項目があり、自分に合った求人募集を一度に見つけることもできます。一方で、リクナビNEXTやエン転職のような全業種対応の求人サイトは、税理士事務所が利用していない場合も多く、実際にはそこに掲載されていない多くの求人募集があることも知っておきましょう。

転職エージェントを利用する

税理士事務所のような、全業種から見るとややニッチな職種については、業界専門の転職エージェントを利用する方法もあります。MS-Japanやマイナビ税理士などが有名です。 しかし、転職エージェントによる転職は個人的にはオススメしません。
なぜなら転職エージェントは、無料でエージェントがついて就職まで面倒を見てくれて、利益は採用した企業側から全額回収するというビジネスモデルだからです。
どれだけ親身な転職エージェントでも、このビジネスモデルのしがらみから開放されることはなく、結局は求職者の個性や意思よりも、ビジネスを優先せざるを得ない場面がきます。
そして、税理士事務所の中で、高いお金を支払って転職エージェントを利用している事務所は、なかなか自社では思うように採用できない企業だったり、単に資金力があるだけという可能性が高いからで、その数もかなり限定されます。
少ない選択肢へのアテンドをされるがままになるのではなく、自分の頭で考えて、自分の手と足で転職先を選んでいく作業が、就職後の納得感にもつながり、頑張りにつながるのではないかと思います。

まとめ

働きながら税理士になることを目指して、税理士事務所の門を叩く人は多いです。そして、多くの人がその目標どおりの夢を叶え税理士となり、独立開業したり、そのまま勤務税理士として活躍し続けたりします。
しかし、それより多くの人は、税理士試験を途中で断念し、税理士事務所スタッフとして働き続けるという現実があります。しかし、税理士業界で働いてみれば分かることですが、それは決して妥協や失敗ではなく、そこで得た知識と経験を活かして、事務所の中で大活躍する道がたくさん残されているのです。

将来どうなるか、と不安に感じないでください。税理士業界の仕事は、やればやったぶんの知識や経験が、きっちり自分の実力として身につき、それを正当に評価してもらえる事務所が必ずあります。

あとはあなたが、覚悟を決めて努力し、それを継続するだけで、しっかりと充分に報われるのがこの税理士業界であり、税理士補助の仕事です。