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税理士事務所が忙しい時期は12~5月!年間スケジュールと規模別の働き方を解説

この記事でわかること

  • 税理士事務所の仕事が忙しい時期や閑散期がいつかを知ることができる
  • 繁忙期における税理士事務所の残業の実態を知ることができる
  • 事務所の規模による繁忙期の違いや閑散期との差についてわかる

税理士事務所の仕事は忙しいというイメージを持っている人もいると思います。そうすると、税理士事務所で働きながら勉強をするのは難しいと不安を感じるかもしれません。
そこで税理士事務所の仕事が実際どの程度忙しいのか、その実態をご紹介します。

税理士事務所が忙しい時期は12~5月!年間スケジュールと規模別の働き方を解説

 

税理士事務所の年間スケジュール

税理士事務所の仕事には、年間を通して行われる「通常業務」と、年に一回程度しか行われない「臨時業務」があります。
臨時業務がある月も通常業務はいつもどおり進めなくてはならないため、税理士事務所の繁忙期とは臨時業務が発生する月のことを指します。

年間通して行われる通常業務

だいたい毎月、顧客企業の経営者や経理担当の方と面談し、相談やアドバイスを行います。その際、会計処理業務に必要な伝票や領収証などの書類を預かってくることもあります。
試算表をベースに面談するため、繁忙期・閑散期に関係なく、毎月会計資料を入力し、数字のチェックをする必要があります

臨時業務の流れ

繁忙期の始まりは年末調整の準備段階から始まります
例年、10月中旬以降に年末調整に使う控除証明書が個人宛に郵送されてくるため、その書類を勤務先に提出してもらいます。
この時、年末調整に使う申告書も一緒に作成して提出してもらう必要があります。
その後、12月中に支給される給料に間に合うように年末調整を行い、従業員に還付します。

1月には年末調整の結果を受けて、各市町村に従業員の給与支払報告書を提出します。
また、家賃などの支払額も集計したうえで、税務署に法定調書合計表を提出します。
さらに、償却資産の取得・除却・売却についてまとめた償却資産申告書を、各市町村に1月中に提出します。

2月になると所得税の確定申告の準備が始まります。
1年間の所得金額をまとめて申告書を作成し、税金の額を計算します。
この時期は、個人の顧客すべての申告を行う必要があるため、最も忙しい時期となります。

5月には、3月決算法人の申告を行います。
3月決算法人の会社は最も数が多いため、その申告に関する業務も集中する時期となるのです。

税理士事務所の繁忙期は12月から翌年5月

税理士事務所の仕事は、繁忙期と閑散期に分けることができます。
これは、税金計算に関するスケジュールが決められているものが多く、そのスケジュールに沿って仕事を行っているためです。
税理士事務所の繁忙期は12月~5月というのが一般的です。

年末調整業務を行う12月

年末調整とは、給料を支払った従業員の1年分の税金計算を会社や事業主が行うことです。
通常、毎年12月の給料支給のタイミングにあわせて年末調整を行います
従業員から書類の提出を受け、全員分のデータを入力し、最後に12月支給分の給料の計算を行うという流れになります。

法定調書合計表や償却資産申告書を提出する1月

法定調書とは、会社が支払った1年分の給料や家賃などの金額を集計し、税務署に報告する書類のことです。
この時、従業員の住む市町村に対しても、従業員ごとに年間いくらの給料を支払ったのか報告します。
また、1年間に取得・処分した償却資産に関する申告も、その償却資産がある市町村に行わなければなりません。
1年間の取引を集計するタイミングとなる1月は、かなり多くの業務を行う必要があるのです。

個人の確定申告を行う3月

毎年3月15日は、所得税の確定申告や贈与税の申告書の提出期限となります。
また、個人事業主の中には消費税を納めなければならない人もおり、この場合の提出期限は3月31日となります。
特に個人事業主の顧客が多い事務所の場合、仕事の期限が一気に偏るため仕事は忙しく、残業時間も長くなる傾向にあります。

3月決算法人の申告を行う5月

法人の決算時期は会社ごとに異なるため、すべて同時に申告する必要はありません。
しかし、多くの会社は3月決算を採用しており、法人の仕事が集中する5月はかなりの仕事量となります
個人事業主より法人の顧問先がメインの税理士事務所では、3月より5月の方が忙しくなります。

税理士事務所の閑散期は6~11月

税理士事務所の仕事は、6月以降、どの事務所も仕事量が減る傾向にあります。
もともと例年8月に実施される税理士試験は、この業界的な閑散期を狙って開催されているそうです。そのため、税理士試験を受験する人にとっては、試験直前の勉強時間を確保しやすい貴重な時期ともなります。

繁忙期の残業時間

気になる税理士事務所の残業時間ですが、すべての税理士事務所を対象としたデータはなく、把握するのは難しい面があります。
いくつかの税理士事務所で働いた経験のある人はご存知でしょうけれど、同じ事務所でも時期による差が顕著でしょう。
通常業務がもともと多い事務所であれば、臨時業務が増える繁忙期には残業は避けられません。
税理士事務所の繁忙期の残業は、毎日2~5時間くらいが連続するのが一般的なように思います。ただ、事務所による差や、個人差が多いことも付け加えておきます。

事務所規模による残業時間の特長

税理士事務所によって残業時間は異なる、と言ってしまうと有意義な情報になりませんので、もう一歩踏み込んで、事務所の規模や特徴によってどのような違いがあるのかを簡単にまとめました。

大手事務所の場合

大手事務所の場合、顧問先企業も大規模法人であることが多く、上場企業などをクライアントに抱える事務所になると3月決算の6月申告(1ヶ月の延長特例を用いてこの時期の申告が多い)が最繁忙期となる可能性が高く、この時期の残業量はかなり多いと考えておいたほうがよいでしょう。
ひとつのクライアントにかける手間や時間も長くなりがちで、年間を通じて業務時間が長くなる傾向にあります。

中堅事務所の場合

上場企業などのクライアントを持たず、中小企業のお客様を多数抱える中堅事務所の場合は、業務量が安定し、なおかつスタッフも複数いるため、極端に残業時間が偏るのは少ないことが多いです。もちろん、先に述べた3月・5月などの繁忙期は仕事量がかなり増えますが、スタッフ同士のチームで負担を分散できる体制が整っている税理士事務所も多く見られます。

個人事務所の場合

個人事務所の場合、顧客も小規模な事業が多く、経理・会計から一貫して請け負っているケースが多いです。そのため、繁忙期の作業が一気に押し寄せることがあります。
もっとも特長的なのが「自分の代わりに自分の仕事をしてくれる人がいない」という点です。
実際に、実務バリバリの頼れるスタッフが繁忙期にインフルエンザで長く休むことになり、ほとんど仕事が回らず悲惨な繁忙期を迎えることになった税理士事務所を耳にしたことがあります。
繁忙期の直前で退職者がでたりした場合も、残るスタッフが大変になることは目に見えています。

専門特化事務所の場合

飲食店や美容業などに業種特化している税理士事務所の場合、個人や小規模の顧客が多くなります。そのため所得税の確定申告時期の業務量は大幅に増えて忙しくなります。業種特化は似た属性のお客様を集めるということですので、忙しい時期が偏ってしまいがちという業務上のデメリットがあります。

一方、同じ専門特化でも、相続税に特化している事務所は、繁忙期・閑散期の区分があまりありません。相続税は、被相続人が亡くなった(ことを知った)日から10ヶ月が申告期限ですので、期限が被らないためです。
ただ、相続税のお客様は土日の面談を希望されることも多く、お客様対応を担当するスタッフはまれに土日対応をする必要があるかもしれません。

税理士業界の繁忙期を前向きに捉える

ここまで述べたとおり、税理士業界は繁忙期と閑散期の差が激しい仕事ということができます。税理士試験を受験する人にとっては、年に一度の税理士試験に向けて、メリハリをつけて勉強しやすいと前向きに捉えることもできます。
一年間毎日同じペースで勉強し続けることが難しい人にとっては、繁忙期は仕事に集中し、閑散期に集中して勉強するという切り替えがつけやすいかも知れません。

また税理士試験の受験生でなくても、閑散期に長期の有給休暇が取りやすいなど、分かりやすく一年間のスケジュールが立てられるとも言えるでしょう。

まとめ

税理士事務所の繁忙期や、一年間の業務スケジュールについて解説しました。
税理士事務所の繁忙期はけっして楽だと言えるものではありませんが、それはどの業界でも同じことでしょう。会社ごとに程度は違いますし、どこまで忙しさを許容するかは個人の問題です。

ひとつ言えることは、税理士業界は繁閑の差が一年間のあいだでハッキリしているということです。事務所ごとに忙しい月と、そうでもない月がある程度予測できるのです。

それを受け入れ、自分の勉強時間やプライベートを計画し、上手く利用する方法を考えれば、税理士事務所の業務のペースも慣れてなじんでくるでしょう。数年以上の業界経験者は、この仕事の波とみな上手く向き合っているように感じます。