税理士事務所の就職・転職情報サイト

会計業界で就職や転職を考えている人向けに会計事務所の実態をリアルに書いていきます。

税理士の仕事に学歴は関係ありますか?

税理士の仕事と学歴は関係するのでしょうか?

優秀な大学を出た人ほど、税理士として活躍する傾向にあるのでしょうか?

結論から言いますと、私は因果関係は無いと思っています。
なぜなら、大学に入る能力と税理士として必要とされる能力は別物だからです。

「税理士に必要な能力は何か」については色々な意見があると思います。

明快な答えが定まっているわけではありませんが、多くの人が「コミュニケーション力」「会計を正確にスピーディーに進める力」「税務知識」の3つの能力は必要だと認めてくれるでしょう。

これらの能力が学歴と関係するのかを考えてみたいと思います。

大学│税理士の仕事に学歴は関係ありますか?

コミュニケーション力と学歴は関係するか?

まず優秀な税理士に共通する能力として、「コミュニケーション能力が高い」という要素があります。

これは、相手の話を聞きながら、自分の中で解釈して理解し、経験や知識から答えを出し、それを相手の感情を加味しながら伝えるということです。

声の大きさや目を見てしゃべることも、広い意味でコミュニケーション力でしょう。

学歴とコミュニケーション力が比例するかと言えば、もちろんしません。

では、どうして税理士はコミュニケーション力が重要なのでしょうか。

それは税理士のお客様である中小企業の経営者が求める能力だからです。

中小企業の経営者は、頭の回転が速い人が多いです。

経営者は初めての人と話をすると、10分もあれば相手の能力を推し量ってしまいます。

専門知識がある、という点では税理士が経営者に負けることはありえないでしょう。

しかし、その専門知識を瞬時に相手の望む形に変えて伝えることは、別能力です。

経営者が求めるものは、まさに伝える能力なのです。

一般的な専門知識ではなく、今の自分に合わせた形でわかりやすく伝えてほしい。

もっとストレートに言えば、「それで、うちはどうすればいいの?得するの?損するの?いくら税金がかかるの?」を説明するということです。

だからこそ知識があってもコミュニケーション力が無いと、宝の持ち腐れになるのです。

正確かつスピーディーな仕事は学歴と関係性があるか?

では次に2つ目の「会計を正確にスピーディーに進める力」が学歴と関係するか、です。

優秀な税理士はミスが少なく、仕事が早いです。

正確性はもともとの性格の面もあるでしょう。

几帳面な性格の人は、はじめからミスが少ないです。

しかし本来は大雑把な人でも、努力でミスを無くしていく人はいっぱいいます。

ひとつひとつの作業をする都度、自分で自己チェックをする習慣が身に付けば、ミスは劇的に減ります。

また同じミスを時間が経過してからも繰り返さないように、ミスから目をそらさず反省することも大事です。

1週間経って、1週間前のミスを覚えていないようでは、穴の開いたバケツで水をすくうがごとく、ミスも出続けます。

大学受験でミスをしない訓練をできたという側面はありますが、学歴そのものと関係性は薄そうです。

仕事の早さは、単に「手を動かす力」ではありません。

先に何が必要になるかを予想して、事前に先回りをしていく段取りが仕事の早さに繋がります。

経験が増えると自然とできるようになる側面もありますが、これから先に必要となることを予想して進めていく計画性。

これがスピーディーな仕事の本質です。

これも学歴との関係性は薄そうです。

また税理士は複数の仕事を並列で進めていく能力が求められます。

仕事を漏らさないようにする仕組みや記憶、優先順位を付ける能力、時間の配分、誰の協力を得るべきかを判断する能力、スタッフとの連携。

こういったことが上手く運べる人は仕事ができる税理士です。

学歴が高いからと言って、必ずしもミスが少なく、段取りが上手いとは言えないでしょう。

学歴と専門知識は関係するか?

では最後に専門知識についてです。

大学受験の本質が記憶力を試す試験だとすると、税理士の専門知識を身に付ける点では似ているかもしれません。

学歴の高い人は、勉強した経験があり勉強に対してストレスが無く、記憶をするのが得意な方が多いです。

ペーパーテストで点を取るのも上手です。

これは税理士試験の合格には役立つ能力でしょう。

ところが、実務で必要となる専門知識が、税理士試験に出る知識とは合致しないところが多いのです。

たとえば法人顧問を持つ際に、法人税や消費税の知識が必要となりますが、
税理士試験のように手計算で税金を計算したり、条文を暗記したりする必要はありません。

税額計算はソフトがしてくれますので、必要な資料を効率よく集めて、必要な条文を素早く見つけてその税法を読み解き解釈する能力が求められます。

また法人顧問を持つためには、融資の知識や節税の知識、税務調査の知識などが必要になります。

こういったノウハウは税理士試験に出るものではありません。

実務の中で先輩から学び、ときには盗んで身に付けるノウハウです。

机の上で学べる知識は税理士に必要な知識の一部とお考え下さい。

まとめ

今回は税理士と学歴について考えてみました。

私見としては、税理士の仕事で必要な能力と学歴にはあまり因果関係がないと感じています。

誤解しないで欲しいのは、高学歴の人にアドバンテージが無いと言っているのではありません。

ただ「学歴は関係ない」ということなんです。

学歴が高くて活躍している人もいっぱいいます。

その人たちは、努力を怠らず、自分の強みを伸ばし、弱みを克服した人たちです。

現行の受験制度で求められる能力と、税理士の現場で求められる能力は多くの点で異なっていると言えるのではないでしょうか。