この記事でわかること
- 企業経理と税理士事務所の違いが分かる
- 税理士事務所で働くべき人が分かる
この記事は、一般企業経理と税理士事務所の違いというテーマで、日商簿記3級・2級などの資格を活かした転職先として、よく検討候補にあがる両者の違いを説明します!
簿記を活かして転職したい方や、転職活動の業界選びで迷っている方はぜひこの動画を最後までご覧ください!
1.企業経理と税理士事務所の一番の違い
就職先、転職先について一般企業の経理に行こうか、税理士事務所に行こうかと悩む方はたくさんいます。
人材紹介会社のホームページや、税理士の方が出ているユーチューブ動画などでも丁寧に説明していることは多いですが、そこで語られていないことで、僕が思う、一番大きな違いは、
一般企業経理が会社に就く、のに対し
税理士事務所は職業に就く、ということです。
ちょっと分かりづらいと思いますので説明します。
会社に就くか職業に就くか。この違いは、両者のクライアント、つまり「誰に向けて働くか?」を見比べると分かりやすいです。
一般企業の経理職は、自社の経理業務のみに携わります。グループの系列会社の経理もまとめて見ることはありますが、とにかく自分が勤務している会社のために、素早く、ミスなく業務を進めることが求められます。
これに対して税理士事務所の職員は、クライアント企業の経理業務に携わります。
クライアントのために、ミスなく、満足してもらえるように業務を進めることが求められます。
税理士事務所は有料サービスとして、クライアントに経理業務を提供しているのです。
一般企業の経理職は、もし社長や上司から経理方法について注文が入れば、その注文どおりに経理業務を変更します。
なぜその経理方法に変えるのか?税務署や金融機関に見せても問題ない方法なのか?ということを経理職の立場の人が考えることはなく、会社が決めたルールに従って作業を進める仕事です。
これが会社に就く、という意味です。
一方、税理士事務所の職員は、所長や上司から経理方法の注文が入ることはありません。
たとえクライアントからの経理方法に注文が入ったとしても、基本ルールを変えることはありません。
なぜなら、税理士事務所の経理処理に求められるのは、税務署や金融機関に見せても問題がない、法律のルールに則っているからです。
日本全国どの税理士事務所でも通用する共通のルールを学んで、それにそって作業を進めることが職業に就く、という意味です。
もちろん、一般企業経理の仕事に就きながらでも、簿記や税法のルールを学んで、自社の経理方法を改善できる方もいるでしょうし、税理士事務所で仕事をしていても、ミスするたびにその場しのぎで本質を学ばず、いつまでたってもスキルが上がらない方もいます。
一般企業経理か税理士事務所かという環境の問題以上に、本人の成長意欲の問題というのは、どの職業でも当然のこと、という前提はあるんですが、同じくらいの意欲を持った人が2,3年も働いた時に、日本全国どこでも通用する、手に職といえるスキルが身に付いているのは、税理士事務所に就職した人でしょう。
2. 仕事内容の違い
続いて、一般企業経理と税理士事務所の仕事内容の違いについて説明します。
よく誤解される例として、一般企業経理は完全に内勤の仕事で、税理士事務所の仕事は外勤、つまりお客様の会社にも訪問するという説明。
これは間違いではないのですが、税理士事務所の職員の中にも完全に内勤の人もいます。
つまり、まず、税理士事務所の職員が、担当者とアシスタントの職種に分かれていて、それぞれの仕事内容が大きく違うことから説明しないといけません。
ただ、それを一から説明していると動画が長くなってしまうので、この動画では、税理士事務所の職員の中でも、より一般企業経理に近い「アシスタント」を比較対象としてみます。
まず、税理士事務所の仕事内容は、クライアントから届いた会計資料をもとに行う記帳代行、つまり会計ソフトへの入力作業です。
それを元に毎月レポートを作成したり、年に一度の決算書、申告書の作成などを行います。
基本的には、これらの作業を1人あたり20社とか30社分、同時並行で行なっていきます。
一方、一般企業経理の仕事内容は、自社の経理作業のみです。
だからといって、業務量が20分の1とか30分の1になるということではなく、次のような業務を行います。
- 預金や小口現金の管理
- 振込や支払い業務
- 入金管理
- 請求書の発行
- 給与計算
- 従業員の経費精算
- 会計ソフト入力
どうでしょうか?税理士事務所と一般企業経理の違いが分かりますか?
今挙げた業務の中で、税理士事務所の仕事内容とかぶるのは、基本的には給与計算と会計ソフト入力だけです。
ようするに、会社内部で、実際に商品が動いたり、現金・預金を動かしたり、経理書類を作成するのは企業経理だけの仕事です。
より現場に近い仕事をする分、一年に一度の決算処理や申告書作成など、難易度の高い業務は、社内に経理がいる会社でも、顧問税理士に外注することが多いです。
その外注された決算申告業務を引き受けるのが税理士事務所の仕事なので、税理士事務所のほうが専門性の高い仕事であると言えます。
さきほど税理士事務所の職員は、毎月20社とか30社の作業を同時並行で行なうと言いましたが、クライアントの数だけ、その会社ごとの経理の「型」があります。
たくさんの会社の経理処理を行うことで、会社ごとの経理の特徴を覚えると同時に、どの会社にも共通する経理の本質を学んでいくことができます。
3.会社規模や年収の違い
ここまで、職に就く、つまり手に職をつけるという観点から、企業経理よりも税理士事務所のほうが良いですよという情報を多くお伝えしてきましたが、そろそろ「それはお前が税理士事務所の人間だからだろ!」と突っ込まれそうなので、企業経理の良い点、そして税理士事務所の悪い点もしっかりお伝えしていこうと思います!
経理職を募集している一般企業は、そもそも従業員が100人以上とか規模が大きいことがほとんどです。上場企業も経理職を募集しています!
企業経理の良い点はまさにここで、 会社の規模が大きいので、初任給や年収が高く、福利厚生も充実している企業が多いことです。 同年代のスタッフもたくさんいて、職場に活気がある企業も多いでしょう!
それに対して税理士事務所は、全体の9割以上が10名未満の個人事務所です。所長税理士によって職場環境の良し悪しはかなり差がありますが、昔は、税理士になるまではむしろ仕事を教えてやってるんだから給料は最低限、という事務所もたくさんありました。いまだに繁忙期は残業がきつい事務所も多いようです。
スタッフの人数が少ないので、雰囲気が悪いとか、年の近いスタッフが1人もおらず、自分以外は高齢の方ばかりということも珍しくありません。
4.税理士事務所で働くべき人
ひとつ、注意しておいて欲しいのは、一般企業の経理に応募して入社しても、営業職に回されたり、社内の部署異動があるということです。
経理がしたかったのに、という話はよく聞くので、入社前にしっかり確認しておいたほうがいいでしょう。
さてここまで、簿記を活かして就職するなら、一般企業経理がいいか、税理士事務所がいいか、どちらにも良い点、悪い点があることをご紹介しました。結局、どっちがお勧めなのか僕なりの結論をお伝えします。
将来自分が会計の専門家として、手に職をつけて働きたい!
そのためには、多少給料が悪くても、悪い職場環境に当たってしまってもガマンする!
一人前の実力をつけるまでは、仕事が終わったあと疲れていても勉強する!
という積極的な意欲がある人は税理士事務所に就職することをお勧めします!
最初はしんどいことも多いですが、一人前になった暁には、一生転職で困ることがなく、努力次第では高収入を目指すことができるのが税理士事務所の仕事です。
逆に、そこまで仕事を頑張れないかもしれない。良い会社に巡り合って、休日と趣味に生きたい。という方は、一般企業経理に就職することをお勧めします!
もちろん、一般企業経理だから専門性がつかないわけではありません。最終的には、どこで働くかよりも、自分がどれだけ頑張るかが一番大事です!