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税務調査は税理士の仕事のゴール

この記事でわかること

  • 税務調査対応の重要性が分かる
  • 税務調査にはどんな種類があるか分かる
  • どうなったら税務調査は終了するか分かる

この記事は、税務調査は税理士の仕事のゴールというテーマで、税理士の仕事の最終目的は何か?税務調査対応で重要なポイントは何か?ということについて、弊社が実際に社内研修として使っている内容を公開します!

税理士事務所に入社してすぐの新人スタッフの方や、これから税理士事務所に入ろうと考えている方は、ぜひこの動画を最後までご覧ください!

1.税務調査対応の重要性

「税理士事務所の仕事内容・新人編」という動画で、税理士事務所の新人スタッフが、入社してまず取り組むことになる4つの業務は、記帳代行 税務監査 決算申告 年末調整という風に紹介しました。

この4つのうち、記帳代行と税務監査は、基本的には毎月の作業で、決算申告と年末調整は、1年に1度の作業です。

”総決算“という言葉が一般の方にも、慣用句のように使われているほどですから、決算が、一年に一度の税理士事務所の仕事のゴールのような気がしませんか?

実はこれ、違います!

税理士事務所の仕事の大きなゴールは、数年に一度の税務調査です。

税理士事務所のスタッフも、納税者の方も、よく勘違いされるのですが、年に一度、税務署に申告書を提出する時、この内容で無事に通るかどうか、ドキドキ心配される方がいます。

しかし、税務署は提出された申告書をその都度、細かく見ることはしません!

記載方法や数字の明らかなミスがないかどうか、だけがチェックされ、その内容が正しいかどうか、売上や経費をごまかしていないか?といったチェックを毎年することはありません。

じゃあ、いつ細かくチェックするのか?というと、税務調査に行こうかどうか、その法人が税務調査の対象先として挙がった時に初めて、過去3年分とか5年分の申告書を、その中身まで、しっかりとチェックするのです。

 

なぜこのように調査をするか?というと税金の時効が関わっています。

税金には時効があり、税務署から一定期間、税金を請求されなければ、納税義務は消滅します。

法人税の時効は申告書の提出状況や不正の有無に応じて3年・5年・7年の3つのパターンがあります。

このため税務署は、毎年急いで申告書をチェックする必要はなく、3年間ためて一気に間違いを発見すればよい、となるのです。

これを逆に言うと、毎年申告書を提出して、税務署から何の反応もなかったとしても、それは、提出した申告書の内容が正しかったという安心材料には全くなりません!

提出した申告書が正しかったかどうか?税務署に追徴課税されないかどうか、その答え合わせは、数年に1度の税務調査の時だけなんです。

税務調査が終わって、数年分の申告書に指摘なしと言われて初めて、毎年の決算申告という仕事に間違いがなかったと胸を張れるわけです。

2.ベンチャーサポート流!税務調査対応のポイント

税務調査対応が、いかに税理士事務所の仕事の中で大事かがお分かり頂けたでしょうか?

もし、税務調査で申告の誤りを指摘されて、追徴課税されてしまったら、その税金と、加算税という罰金は、全額、お客様が税務署に払います。

お客様からすると、毎月数万円、決算の時には10万円以上払って税理士に頼んでいたのに、税務調査でさらに税金を追加で支払う羽目になった、となると怒って別の税理士に契約を変えてしまうこともありえます。

そのため、弊社ベンチャーサポートでは、入社して早い段階で、この税務調査の重要性をしっかり伝えて、研修をしっかり受けてもらっています。

入社した新人スタッフが、税務調査を実際に経験するのは、1年後や2年後とだいぶ先になることもありますが、それでも入社後すぐに知ってもらいます。

なぜかというと、日々の記帳代行や、年一度の決算申告という作業を、何のためにやっているか?そのゴールと目的を正しく知ってもらうことで、作業のうち重要な部分とそうでない部分の区別を、自分で判断できるようにしたり、お客様と話すときに、自分の作業目線ではなく、お客様が期待するサービス目線で会話をできるようにするためです。

 

ベンチャーサポートの税務調査研修で特に強調しているのは、税務調査での追徴課税が0円であることを目指すのではなくて、税務調査後にお客様の満足度が一番高くなることを目指そうと伝えています!

お客様の満足度は、かならずしも追徴課税の金額だけでは決まりません。

追徴課税が1万円だけだったとしても、すごくガッカリされる方もいらっしゃいますし、反対に、追徴課税が100万円を超えても、「ありがとう」と感謝される方もいらっしゃいます。

なぜこういう事が起こるかというと、税務調査でまったく追徴課税されないことを最優先に考えると、最初から一番保守的な考え方をして、多めに税金を払っておくことが正解になってしまうからです。

ベンチャーサポート流の税務調査対応の正解は、お客様に納得安心してもらって、最後に満足してもらうことです。

そのために大事なのは、毎年の決算の際に数字の中身をしっかり説明して、理解してもらっておくことと、いざ税務調査の連絡が入った時にお客様と入念な事前準備をすることです。

とくに、税務調査の際には、元帳や請求書だけでなく、社長のメモや注文データなど、より取引の実態が分かる証拠を調べられるので、決算で数字をチェックする際に、提出された資料を鵜呑みするだけでなく、自分が税務調査官になったつもりで、本当にこれは正しい数字か?

と考えながら資料も見せてもらうことが、ゆくゆくは顧客満足に繋がりますし、自分自身の実務能力の成長にも繋がります!

3.税務調査にはどんな種類がある?

税務調査にはどんな種類がある?

税理士事務所にとって、税務調査とはどういうイベントで、何に注意するべきか、という大事なポイントはお伝えしましたので、ここからは、税務調査とは何か?について解説します。

税務調査には、強制調査と任意調査という2つの種類があります。

強制調査は、通称マルサと呼ばれる国税局査察部が、裁判所の令状を持って、ある日突然、会社や自宅に一斉に現れて、有無を言わさずに調査されます。

脱税の疑いが強い場合などに限って実施され、調査官は税金を取るだけでなく、刑事事件として立件することを目的としています。

これに対して、任意調査は、税務署の職員が行う一般的な税務調査です。
任意調査のうちでも、無予告調査と言って、事前の予告なくある日突然、調査官が会社に押しかけるパターンもありますが、これは現金商売などごく一部で、ほとんどのケースでは、事前に税理士に電話がかかってきて、税務調査の場所と日時を予約してから実施されます。

事前の電話で、担当調査官が誰か分かりますので、その調査官の役職や、電話がかかってきた時期によって、今回の税務調査が厳しくなりそうか、緩くて済みそうか、という予想がつきますが、この辺りはまた別の記事で解説します。

任意調査というと、任意というぐらいだから断れるのか?と思うかも知れませんが、調査を受けない場合は罰則もあるため、実質的には税務署から連絡があれば、税務調査に協力する他ありません。

この辺りもこの動画では詳しく説明しませんが、どういう法律構成で任意調査が成り立っているか?とても大事な論点になりますので、税理士事務所で働いているなら、ぜひ調べてみましょう。

法人税の税務調査は、基本的には2日間行われます。

朝から夕方まで、税務調査官が社長に色々質問をしたり、会社に置いてある会計資料を見て、申告書の数字に間違いがないかどうかチェックします。

その2日間で調査が終わるわけではなく、そこで見つけた疑問点を、税務調査官が持ち帰って詳しく調査し、その後1ヶ月以上かけて、その疑問点が解決すれば税務調査は終了します。

調査の結果、数字が誤っていると調査官が指摘してくれば、税理士はそれに対して反論していくことになります。

その話し合いが終わると、追加で支払わなければならない税額が決まり、その税金を納めて調査を終えるか、納得行かない場合は税務署と争うことになります。

4.どうなったら税務調査は終了する?

どうなったら税務調査は終了する?

税務調査の着地点としては大きく3つあります。

申告是認(ぜにん)、修正申告、更正の3つです。

申告是認とは、最初に提出した申告書に誤りがなく、追徴税も一切発生せずに終わることです。

修正申告とは、調査官の指摘を認めて申告をし直すことです。間違っていた分の税金を支払い、さらに罰金的な意味合いで、加算税と延滞税を支払うことになります。
赤字の繰越しがある場合などは、修正申告をしても追徴税が発生しないこともあります。
税務調査は、この修正申告で終わるケースが一番多いです。

更正とは、調査官の指摘を認めず修正申告をしない場合に、税務署側がとる処分のことです。
更正された場合、不服申立てをすることができますが、納税者側の主張が認められる可能性はかなり低いです。

これらの税務調査の結果は、その会社の税の歴史、税歴と言って税務署の中で内申書のように残ります。

脱税が見つかったり、多額の追徴税があった場合はこの税歴が悪くなるため、次の税務調査の実施が早くなったり、やり手の調査官がやってくるなど、税務署にマークされることになります。

5.よくある3つの勘違い

税務調査よくある3つの勘違い

ここで、税務調査によくある3つの勘違いを紹介しましょう。

1つ目は、この動画の前半でも説明したとおり、税務署に提出した申告書は、提出の際に毎年じっくりチェックされるという勘違いです。

申告書の中身を提出直後にチェックされることはありません!

ただし!!ひとつだけ例外があります。還付の申告です。納税ではなく、還付をしてもらうための申告書は提出直後にじっくりとチェックされますし、場合によっては税務調査に発展することも珍しくありません。

2つ目は、前回の税務調査で指摘されなかったことは大丈夫!という勘違いです。

一度、税務調査が来て、指摘なしの申告是認で終わった数年後、また同じ会社に税務調査が来たとします。

売上や原価、在庫の計算方法など、数年前と同じやり方でしていたとしても、新しく来た調査官に集計方法が間違ってる!と指摘されて追徴課税されることがあります。

この時、前の調査官は何も言わなかったのに!という反論は通用しません。調査官も2日間ですべてを見切れるわけではないので、調査官が指摘しなかったことはすべて適切ですよ!という意味ではなく、その調査官には見つけられなかったというだけと考えましょう。

処理が間違ってるかどうかは、あくまでその都度、税法のルールと照らして判断されます。

3つ目は、他の会社でもやってるから大丈夫!という勘違いです。

税務調査で、調査官から取引について指摘された時に「こんな取引、業界では当たり前だよ!どこもやってるよ!」と言ってしまう経営者の方はけっこう多いです。

これも、その取引や処理が適切かどうかは、あくまでその都度、税法のルールと照らして判断されます。
赤信号はみんなで渡っても赤信号です!と言わんばかりに、調査官は「じゃあその、当たり前にやっている会社の名前を教えて下さい。調査しに行きますから」と返されてしまうのがオチです。