この記事でわかること
- 電子帳簿保存法の最新改正が分かる
- 電子データ保存とは何かが分かる
- 電子データ保存とはどうすればよいかが分かる
この記事は、電子帳簿保存法の最新改正アナウンスというテーマで、弊社が実際に社内スタッフへの周知用に使っている資料をまとめて公開します!
12月10日に発表された令和4年度の税制改正大綱を元に最新の情報をお伝えします!
税理士事務所の社内研修で、お客様へ実際にアナウンスするためのものなので、かなり具体的な実務の内容になっています。
ぜひ最後までご覧ください!
やっぱり2年間は現状の紙保存でOK!
今日から約3週間後、2022年1月1日から個人事業主も法人も共通で、ビジネス上の取引のうち電子取引に該当するものについては、請求書や領収書などを印刷して紙で保存することが禁止されて、電子データで保存することが義務付けられていました!
紙保存をやめて、ちゃんとルールどおりに電子データで保存をしなければ、最悪の場合、税務調査で多額の追徴税の指摘を受けることもありうるということで、大きな話題となっています。
とくに中小零細企業にとって、事務負担がすごく大きいということで、この改正については色々と揉めていたのですが、年明けからの施行を目の前にして、この土壇場で、電子データ保存の義務化が2年間猶予されることが決まりました!
ただ、注意しなければならないのは、紙保存でもOKという2年間の猶予を受けるためには税務署長の承認が必要だということです。
では、どうすれば税務署長の承認が受けられるか、というと、その申請方法や申請期限が具体的にはまだ発表されていません。
と、ここまでが先週時点での情報だったのですが、12月10日、令和4年度の税制改正大綱により、この税務署長の承認を受けることについて、新情報が発表されました!!
電子データ保存の義務化への対応が難しい企業に配慮して、税務署長への手続きなしで、引き続き紙で保存できるようにする。
ということです!
2021年12月13日時点の最新情報を端的にまとめると、
来年1月から電子データの保存が強制されることが決まっていましたが、直前になって2年間の猶予が認められることになりました!
この2年間の猶予を受けるための手続きもとくに必要ありません!
ということになります。
義務化される予定だった電子データ保存とは
紙保存でも許される2年間の猶予ができたという最新情報以前に、義務化される予定だった電子データ保存って何?という、最新情報に追いついていない方もたくさんいらっしゃると思います。
なのでここからは、そもそも1月から義務化される予定だった電子データの保存義務について解説していきます。
電子帳簿保存法では、保存すべき書類を大きく3つに分けてそれぞれの保存ルールを定めています。
国税庁のサイトが分かりやすいので引用させて頂きます。
1つ目は、自社で作成した、自社の会計帳簿や、取引相手に発行した請求書などの控えで、電子帳簿等保存あるいは紙での保存が認められます。
2つ目は、他社から紙でもらった領収書や請求書などの書類で、スキャナ保存あるいは紙での保存が認められます。
最後3つ目の区分がとくに大事なのですが、電子取引については、紙保存が認められず、電子データ保存が義務化されます!
紙保存していた場合は、最悪、税務調査で追徴税を課すことがありますよ!というのがこれまでの情報で判明している事実でした。
これが、何の手続きをしなくても、2年間は紙保存で構わない。という情報が新しくでて、胸をホッとなでおろしたのが現状です。
さて、ここで出てきた電子取引とは何のことを指すのでしょうか?
電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引と定義されています。
カンタンに言うとネット取引のことです!
このネット取引から生じる税務上、「保存が必要な情報」とは
- ウェブサイトのフォームから発注した時の領収書
- メール添付でもらったPDFの請求書
- Amazonや楽天で買い物をした時の履歴
- スマホアプリ決済の履歴
など、こういった情報を紙ではなく、電子データで保存しなさい、というのが新しいルールなのです。
1つ目の電子帳簿等保存、2つ目のスキャナ保存はもともと、紙の保存がまだ認められていますので、この記事では触れず、この3つ目の電子取引について、具体的にどう保存すればよいのか?を見ていきましょう。
電子データ保存とはどうすればよいか?
電子取引について2年後から義務化される、電子データ保存の具体的な方法について説明します。
大きなポイントは2つです。
- 1. 「日付・金額・取引先」で検索できるようにする
- 2. 改ざん防止のための措置をとる
まず、「日付・金額・取引先」で検索できるようにするというのは、つまり、税務調査があったときに、調査官がすぐこの書類にアクセスできるようにしておくように、というルールです。
国税庁は、検索できる方法として2つの例示を出しています。
1つは、エクセルで管理しておくということです。
こちらを見て下さい。連番を付して、何番が何の資料か、というのを手入力していくことになるので、すごく手間がかかってしまうし、逆にすごくアナログな方法だと思います。
ということで、2つ目の方法を見てみると、データを保存するときのファイル名に必ず、日付、金額、取引先名を入力しておき、フォルダもしっかり分類しておくという方法です。
エクセルで索引を作る方法よりは、よほど手軽だと思うので、実際にはこのようにして、「日付・金額・取引先」で検索できるようにしておくのがいいでしょう!
改めて税務署に言われなくても、このデータ管理は普通に便利だと思いますので、まだやっていない方は、今からでもこの方法のように、規則的にファイル名をつけておき、慣れておきましょう!
Amazonや楽天あたりは、どんどん買い物をして欲しいので、そのうち新しい法律に対応した購入履歴を一括ダウンロードできるようになると思います。
ちなみに、この「日付・金額・取引先」による検索要件について、基準期間の売上高が1千万円以下の小規模事業者は、要件を満たさなくていい、とされています。
電子データ保存の2つ目のポイント、改ざん防止のための措置をとるというのは、日付や数字をカンタンにごまかせないように、というこちらも税務調査を念頭においたルールです。
国税庁はこの改ざん防止のための方法について3つの例示を出しています。
- 1. タイムスタンプ付与
- 2. 履歴が残るシステムの導入
- 3. 事務処理規程の作成
まず、タイムスタンプというのは、ある時刻にその電子データが存在していたこと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術のことです。
紙でいえば、会社のデータ印とか収受日付印のようなものですね。日付をくるくる回して赤いスタンプを押すやつの、電子版です。
ただ、当然導入にはコストがかかってしまいます。
2つめの例示にある、履歴が残るシステムの導入ですが、今後、新しい法律にあわせて安いパッケージ商品なども出てくることが予想されます。しかし導入にコストがかかることは間違いないでしょう。
というわけで現時点で、中小企業に適した、コストのかからない改ざん防止方法は、3つめの、事務処理規程の作成ということになります。
これについては、国税庁が発表している電子帳簿保存法一問一答に規程の記載例が出ています。
この規程を作成し、全社員に周知してこのとおり運用していれば、改ざん防止のための措置を取っていると認められるというわけです。
電子データ保存の具体的な方法についてまとめると、
- 1. 「日付・金額・取引先」で検索できるようにする
ネット取引のデータを保存するときのファイル名には必ず、日付、金額、取引先名を入力しておき、フォルダもしっかり分類しておく。
そして
- 2. 改ざん防止のための措置をとる
国税庁の記載例に沿って、社内に事務処理規程を備えておく。
これをしておけば、2年後の電子データ保存の義務化が来ても大丈夫、ということになります。
ただし、電子帳簿保存法については今後も細かなルール改正が予想されますので、常に続報を注意して見ておきましょう!