この記事でわかること
- ふるさと納税が何か分かる
- ふるさと納税の確定申告手続きが分かる
- ふるさと納税の令和3年・改正点が分かる
- ふるさと納税の限度額計算方法が分かる
この記事は、ふるさと納税の令和3年改正点というテーマで、弊社が実際に社内研修動画として使っている内容を公開します!
税理士事務所の社内研修ですので、限度額の計算や、利用上の注意など、かなり具体的な実務の内容になっています。
ふるさと納税はとくにお客様からの質問が多い点なので、ぜひ最後までご覧ください!
目次
1.ふるさと納税とは?
税理士事務所の実務未経験の方もたくさん見てくださっているので、まずふるさと納税とは?という解説からしていきます。
総務省のふるさと納税ポータルサイトによると、令和元年度のふるさと納税の受入金額が約4900億円、件数は約2300万件でした。
全国で約400万人が、ふるさと納税を利用しています。
なぜこんなに話題になっているのでしょうか?
それは、各自治体にふるさと納税をすると、そのお礼に、各地の特産品がもらえるという仕組みだからです。
しかも、実質的に自分が負担する金額は2000円だけです。
2000円で各地の特産品がどんどん届くのでお得!ということでこれだけ話題になっています。
では、どれだけ寄付をしても実質負担が2000円というカラクリについて説明します。
たとえば、令和3年という1年間のうちに、私が5万円のふるさと納税をしたとします。お米とかお肉とか蟹とか、合計で約1.5万円相当の特産品が届きます。
この時点で5万円の現金が出ていっているのですが、翌年3月に確定申告する所得税と、翌年6月以降のお給料から毎月天引きされる住民税から、合計4万8千円の税金が控除されます。
5万円寄付して、翌年の税金が4万8千円安くなるので、実質的に私は2千円しか損をしていません。
でも、手元には1.5万円相当の特産品が届き、美味しい物を食べたりできる、という仕組みです。
ふるさと納税をすればするほど特産品がたくさんもらえて、得になるのが分かるでしょうか?
2. 大阪府泉佐野市のふるさと納税事件
このふるさと納税のお得さを象徴する出来事として、税理士事務所スタッフならぜひ内容まで知っておいて欲しいのが、大阪府泉佐野市のアマゾンギフト券付きふるさと納税事件です。
さきほどのふるさと納税の説明を聞いて、アマゾンギフト券が返礼品になることのヤバさに、すぐにピンと来ましたか?
たとえば、当時10万円寄付すると、2万円のアマゾンギフト券が手に入りました。
先ほどの説明と同じく、そのうち9万8千円は翌年の税金から控除されるので、実質負担2千円で、2万円のアマギフが手に入っています。錬金術です。
泉佐野市のHPはアクセスが殺到して、一時的にサイトに繋がらない状況だったというのも納得できますよね?
税理士事務所のスタッフなら、こういう話題はいち早く食いついて、経営者とのちょっとした話題にできると、専門家という感じが出せます!
ちなみに、国と泉佐野市は訴訟になって、最高裁まで行き、令和2年に泉佐野市勝訴の判決がでています。興味がある方はググってみて下さい。
さて、このふるさと納税ですが、無限にできるわけではありません。その人の収入に応じた、一年間の上限額が設定されています。
たとえば独身のサラリーマンで年収500万円の人なら年間約6万円まで、年収1000万円の人なら約17万円までという具合に、高収入の人ほど、たくさんふるさと納税できる仕組みになっています。
このため、当時、元政治家の舛添要一さんが「この制度の本来の趣旨を外れた、金持ちのためのカタログショッピング」と批判したのもうなずけます。
ふるさと納税の上限額の計算については、税理士事務所のお客様からとくによく質問されますので、のちほど詳しく解説します。
3. ふるさと納税の確定申告手続き
ふるさと納税をして、翌年の税金から控除するための手続きは2つの方法があります。
1つは自分で確定申告する方法。
もう1つは、ワンストップ特例制度といって、確定申告のいらない簡便的な方法です。
ワンストップ特例制度を利用するには条件があって、1年間の寄付先が5つの自治体以下であることと、ほかの理由で確定申告をしない。ということです。
ワンストップ特例制度を利用する場合は、年明け1月10日までに申請書と必要書類を郵送にて、寄付先の各自治体宛てに提出しなければいけません。
ちなみに、この場合は所得税の確定申告をしないので、全額、住民税から控除されることになります。
6つ以上の自治体に寄付した場合や、医療費控除を受ける、二箇所以上から給料をもらっているなど、別の理由で確定申告が必要な場合は、ワンストップ特例制度は利用できず、確定申告で控除の手続きをすることになります。
この場合、翌年3月15日までに、管轄の税務署に提出すればよく、複数の自治体への提出は不要です。
これらの手続きを忘れてしまうと、単に寄付して、損な買い物をしてしまっただけになるので注意しましょう!
4. ふるさと納税の令和3年・改正点
令和3年のふるさと納税の改正点をお伝えします。
さきほど説明した、税金を控除する手続きのうち、ワンストップ特例制度ではなく確定申告をする場合について、添付書類が楽になった。という改正です。
これまでは、確定申告書に自治体ごとの寄付金受領証明書、つまり寄付ごとの領収書を全部集めて添付しなければならなかったのですが、今年からは特定事業者が発行する「寄付金控除に関する証明書」を添付すれば良いことになりました。
特定事業者って何かと言うと、さとふる、ふるさとチョイス、楽天ふるさと納税などの、ふるさと納税の有名なポータルサイトのことです。
同じポータルサイトを経由して寄付したものは、自治体が違っても、そのポータルサイトが発行する証明書一枚で便利に手続きできるようになった、という改正です。
なので、ふるさと納税をする際は、さとふるならさとふる、ふるさとチョイスならふるさとチョイスと、同じポータルサイトを利用したほうが書類集めが楽になるということです。
国税庁長官が指定した特定事業者
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/koujyo/kifukin/tokutei.htm
5. ふるさと納税の限度額計算
続いて、ふるさと納税は年間にいくらまでできるか?ふるさと納税の限度額計算について解説します。
税理士事務所のお客様からこの時期、とてもよく質問されます。
が、実は、各社のポータルサイトが年々すごく利用しやすくなっていて、正直、限度額を計算するだけなら、ふるさとチョイスのホームページを入力するのが一番便利だと思います。
以前は、株式の譲渡があるとかイレギュラーな場合、シミュレーションでは計算できなかったんですが、今はほとんどのパターンで計算できます。
今年の年収を入れて、家族構成を入れて、該当する所得控除の金額を入れれば、ふるさと納税の上限額が計算できます。
ふるさと納税の上限額、っていう言葉の意味を改めて説明すると、寄付自体はいくらでも好きなだけできるんですが、翌年の税金から控除できる上限額は決まっているので、実質負担2000円でたくさん返礼品が欲しい、と考える人は、この上限額までに収めておかないと実質負担額が増えてしまうということです。
さて、各社のポータルサイトで自動で限度額を計算できます。と言ってしまうと私たち税理士の知識が磨かれません。
ふるさと納税の上限額の計算方法をきちんと知っておきましょう。ただし、かなり難しい算式です。とても暗記できるレベルではありません。
和光市のホームページが一番分かりやすかったので、こちらを見ながら説明します。
ふるさと納税により税金が安くなる仕組みは、所得税、住民税それぞれから寄付金控除されるためです。
全部で3段階の控除金額の計算があり、
- 所得税の寄付金控除
- 住民税の寄付金控除(基本分)
- 住民税の寄付金控除(特例分)
この合計が寄付金額マイナス2千円と一致します。
途中説明した、ワンストップ特例制度を利用した場合は1番の所得税からの控除が、住民税から控除されることになります。
この計算式を見ても、分かりづらいですよね。
そこで、上限額を求める計算式を見てみましょう。
表にある個人住民税所得割額というのは、住民税額から均等割額4000円を引いたものなので、住民税額と読み替えても問題ありません。
つまり、所得税の課税所得金額と、住民税額が分かれば、ふるさと納税の上限額は計算できます。
所得税の課税所得金額とは、総所得金額から所得控除の合計額を引いた金額です。
総所得金額とは、この1年間の給与所得の他、株式の配当所得とか、不動産所得とか総合課税される所得を合算して、損益通算や繰越控除を適用した後の金額です。
損益通算や繰越控除は、今分からなければ一旦無視してもOKですが、総合課税される所得と分離課税される所得の違いは税理士事務所で働くのであれば、すぐに覚えておいたほうがいいでしょう。
総合課税される所得とは、さまざまな所得を合算したあと、最終的に所得税の累進税率をかけて税金を計算する所得
分離課税される所得とは、所得ごとに決められた一定の所得税率をかけて税金を計算する所得を言います。
所得控除の合計額とは、社会保険料控除、生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除、医療費控除、基礎控除など、家族構成や保険料の支払いなどによって、その人ごとに大きく変わる金額です。
これらを計算して、どの所得税の税率に当てはまるかを確認して、住民税額から上限額を求めることができます。
住民税額は、所得税の課税所得金額に10%をかけた金額とほぼ同じです。(※厳密には所得控除金額に差があります)
たとえば、専業主婦の奥さんがいる年収500万円の男性を例に計算してみましょう。
給与収入500万円から給与所得控除144万円を引いた356万円が給与所得の金額となります。
この方は、社会保険料が給料から年間で45万円天引きされていて、生命保険にもしっかり入っているとします。
社会保険料控除45万円、生命保険料控除5万円、配偶者控除38万円、基礎控除48万円、合計136万円が所得控除の合計額となります。
356万円から136万円を引いた220万円が所得税の課税所得金額。
さきほどの総合課税の場合の表に当てはめると、所得税の税率は5%のゾーンとなります。
住民税額はざっくり220万円✕10%と計算して22万円。
22万円かける23.558%たす2千円は53,827円となります!
実際にお客様に案内するときは、この計算結果だけでなく、誤差なども考慮して、5万円とか、4万5千円くらいまでなら安心してふるさと納税できますよ、と伝えることが多いです。
さて、もうひとつややこしいのが、株式や不動産の譲渡などによる分離課税の所得がある場合です。
この場合、ふるさと納税の上限額はこのような計算式になります。
この場合は累進税率ではないので、所得の区分、どれに当てはまるか?さえ分かれば単純に計算することができます。
総合課税の所得と分離課税の所得が混ざっている場合は、今計算したものをざっくり合算したものとなります。
6. ふるさと納税の返礼品に税金がかかる?
そして、税理士事務所スタッフとして注意しなければならないのが、年収3000万円、4000万円を超えるようなお客様が多額のふるさと納税をする場合に、ふるさと納税の返礼品には税金がかかる、ということを知っておいて下さい。
総務省のふるさと納税ポータルサイトに明記さえていますが、寄付額の約3割相当の価値である、ふるさと納税の返礼品は一時所得に該当し、所得税がかかります。
こうなっては、実質負担が2000円では済まなくなるので注意しておかないといけないのですが、一時所得は、年間50万円以下だと所得税がかからない決まりになっています。なので、よほど高額のふるさと納税でなければ、この点も気にする必要はありません。