この記事でわかること
- 税理士の平均年収について厚生労働省の統計から知ることができる
- 税理士法人・会計事務所の規模による年収の違いを知ることができる
- 開業した税理士や一般企業の勤務税理士の年収についてわかる
これから税理士を目指す人、あるいは税理士になることを目指して勉強している人にとって、税理士の年収は気になると思います。
そこで、税理士の平均年収についての統計から、その平均年収を見てみましょう。
同じ税理士でも、働き方などでその金額は様々ですので、ぜひ参考にしてください。
税理士の平均年収は683万円
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、おもな職種別の給与額の統計を公表しています。
「令和元年度賃金構造基本統計調査」の中で、「公認会計士、税理士」の金額は以下のようになっています。
毎月の給与の額の平均
公認会計士、税理士に対する毎月の給与の平均額は以下のようになっています。
男性(平均年齢41.8歳) | 52.5万円 |
---|---|
女性(平均年齢44.4歳) | 36.0万円 |
全体(平均年齢42.7歳) | 47.2万円 |
男性と女性とでは、平均給与の額に毎月16万円以上の差があることがわかります。
ただし、女性の中では平均給与額は、他の職業と比べてかなり高い方となっています。
賞与の額の平均
公認会計士、税理士に対する年間の賞与の平均額は以下のようになっています。
男性(平均年齢41.8歳) | 136.3万円 |
---|---|
女性(平均年齢44.4歳) | 77.2万円 |
全体(平均年齢42.7歳) | 117.2万円 |
こちらも男女では年間60万円近い差があることがわかります。
また、女性の中ではやはり、他の職業と比べて高い金額となっています。
年収の平均額
公認会計士、税理士の平均年収を給与・賞与の平均額から計算した結果は以下のとおりです。
男性(平均年齢41.8歳) | 766.3万円 |
---|---|
女性(平均年齢44.4歳) | 509.2万円 |
全体(平均年齢42.7歳) | 683.6万円 |
公認会計士、税理士の平均年収は683万円であることがわかりました。
男女差については、働き方の差や役職の差によるところが大きいと思われます。
特に女性は出産や育児で現場を離れたり昇進が遅れたりするため、このような結果になっていると考えられます。
年齢別の平均額
年齢層別の平均額も公表されています。
男女別にその金額は以下のようになっています。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
20~24歳 | 417.5万円 | 365.4万円 |
25~29歳 | 528.7万円 | 393.9万円 |
30~34歳 | 766.7万円 | 557.1万円 |
35~39歳 | 780.5万円 | 527.6万円 |
40~44歳 | 899.9万円 | 594.8万円 |
45~49歳 | 624.2万円 | 578.7万円 |
50~54歳 | 800.5万円 | 357.5万円 |
55~59歳 | 746.8万円 | 310.4万円 |
60~64歳 | 1263.5万円 | 614.1万円 |
65~69歳 | 523.5万円 | 867.0万円 |
70歳~ | 295.6万円 | 323.8万円 |
統計上、年齢別の人数にはバラツキがあるため、必ずしも実態を表しているとは言えないかもしれません。
ただ、年齢に応じて年収が上昇するというわけではないことがわかります。
若いうちからたくさん給料をもらいたいという人にとっては、公認会計士、税理士は魅力的な職業と言えるでしょう。
都道府県別の平均額
都道府県別の公認会計士、税理士の平均年収も公表されています。
ただ、公認会計士や税理士の統計の対象人数が全国で500人余りしかおらず、都道府県によってはゼロとなっている場合もあります。
そのため、実態を正確に表しているとは言えないのですが、都道府県別のトップは東京都で、平均年収は1,212.7万円となりました。
すべての職業で見たときも、平均年収のトップは東京都であり、この傾向は公認会計士や税理士でも変わりはないと思われます。
税理士法人・会計事務所の年収
税理士となった人が働く職場としてまず思いつくのが、税理士法人や会計事務所です。
そこで、税理士法人や会計事務所で働いた場合の年収について調べてみました。
税理士法人の年収
一般的に、規模の大きな税理士法人ほど年収は高くなります。
特に、BIG4と呼ばれる税理士法人の場合、20代でも初任給の段階で500万円ほどになり、平均では1,000万円程度とも言われます。
また、これらの税理士法人で管理職となれば1,000万円超、役員となればさらに1,500万円以上となります。
一方、規模の小さな税理士法人になると年収が低くなる傾向にあります。
特に、中小企業がメイン顧客となる税理士法人では、長年勤務しても600万円~800万円ほどで頭打ちとなることが多いでしょう。
上記の金額は、税理士の有資格者に限らない一般のスタッフも含んだ平均です。
規模の大小あわせて全体的に見れば、「税理士法人スタッフ」の平均年収は約500万円程度と考えられます。
会計事務所の年収
会計事務所の多くは税理士が1人あるいは2人程度の小規模経営であり、そこで働く職員の数もそれほど多くはありません。
このような事務所の場合、税理士資格を保有する人を採用しないこともあります。
また、採用したとしてもその年収は高くないため、最初は年収200万円台、300万円台からスタートとなります。
大手の税理士法人のような人事制度もない場合が多く、役職が上がることで昇給することもありません。
そのため、平均年収も大規模な税理士法人ほど高くありません。
大手の税理士法人の方が年収が高くなる理由
同じ税理士の仕事をしているのに、どうして大手の税理士法人の方が平均年収が高くなるのでしょうか。
それは、税理士として行う業務の内容が異なるためです。
中小の税理士法人や会計事務所の主要な業務は、中小企業の経理業務や税金計算です。
中小企業が内部で処理できない業務を、税理士に依頼しているのです。
これに対して、大手の税理士法人は企業経営のコンサルティングや国際税務など収益性の高い業務まで手掛けていることが多いです。
個人の税理士では対応できない業務であり、また収益力の高いクライアントがいるため、税理士法人としての報酬も高くなります。
これから税理士を目指す人は、漠然と税理士を目指すのではなく、どのくらいの規模でどんな専門分野の事務所に勤めるかによって、大きな違いがあることを覚えておきましょう。
開業税理士の年収
それでは、税理士事務所を開業した場合の年収はどれくらいになるのでしょうか。
日本税理士会連合会が公表した「第6回税理士実態調査報告書」には、開業税理士の平均年収についての記載があります。
これによれば、平成25年における開業税理士の平均収入は2,205万円、平均所得金額は744万円となっています。
収入とは売上、所得とは売上から経費を差し引いたものですので、開業税理士の年収が744万円?と聞くと、少なく感じるかもしれないですが、交際費などの飲食費等は経費として一部使用できることを考えると、自由になるお金はそこそこあるでしょう。
この調査は10年に1度行われていますが、10年前は平均収入2,690万円、平均所得は916万円でした。
つまり、開業税理士の年収は減少傾向にあり、これは今も続いている傾向です。
インターネットによる価格競争などが大きく影響しているかも知れません。
一般企業で働く税理士の年収
税理士に対するニーズは、何も税理士法人や会計事務所からだけではありません。
一般企業からの求人もあり、その多くは経理部門からの求人となっています。
このような場合は、基本的にその企業の給与テーブルにもとづいた給与が支払われることとなります。
ただし、税理士資格を有する人の採用となれば、企業側は低くても450~500万円程度の年収を支払う覚悟が必要でしょう。
また、管理職を任されるような場合は、600万円以上となるかと思います。
また、税理士にはコンサルティングファームからの求人もあります。
ただし、税理士としての経験が豊富であることに加え、高いスキルや問題提起・問題解決の能力が求められます。
コンサルティングファームの年収は、外資系だと軽く1,000万円を超えるような企業も多く、日系でも700万円~800万円となります。
税理士資格を取得するためには5科目に合格しなければなりませんが、5科目に合格できていない人もいます。
ただ、税金の申告は外部税理士に任せていて、求人応募しているのは社内の経理責任者のような場合、必ずしも税理士資格は必要ありません。
経験と能力次第では税理士資格がある人と変わらない条件で働くことができるのです。
最後に、税理士の短時間勤務(パート労働)についてご紹介します。
育児期間中や介護などのために、短時間だけ勤務する働き方を選択することができるのです。特に会計事務所などでは、繁忙期だけ知識や経験のある人に来てもらいたいというニーズがあります。
教わったことをそのまま作業するだけのスタッフであれば、時給1000円程度(※地域差があります)でしょう。
しかし、税務知識があり、決算書や申告書の作成実務がクリアできる人なら、1500円~2000円以上の時給をもらうことも珍しくありません。
まとめ
税理士の平均年収について見てきました。
ここまで書いた内容を見ていただけばわかるとおり、所属する法人・事務所の規模や、本人の資格有無・キャリア等によって、その金額は大きく変わります。
また、平均ではそれほど飛びぬけて高くないように見える平均年収も、実際に平均をはるかに超える収入を得ている人がいます。
税理士を目指す際には、最終的にどのような場所で働きたいのかもイメージしてみるといいでしょう。