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税理士事務所の繁忙期と「残業の実態」について

「わたし、定時で帰ります。」(TBS)というタイトルのドラマが話題を集めるなど、働き方改革という言葉もずいぶん定着してきました。

採用面接の現場に立っていますと、求職者が就職先を決める判断基準も、「給料の高さ」よりも労働時間や休日数を気にする人が増えてきたことを実感します。

昇給・出世を目指して遅くまで働き、週末も知識の習得に勤しむ人は若い人の中にもいますが、10年前と比べると、数はずいぶん減ったような印象を受けます。

 

ただ、ワークライフバランスと言って私生活を充実させる向きが出てきたのは、労働者の意識が単純に変わっただけではなく、そういった働き方ができる企業が増えてきた証拠のひとつでもあるとも思っています。

ワークライフバランスを語るうえで、一番分かりやすい指標が残業時間と言えるでしょう。この記事では、税理士事務所・会計事務所の残業の実態について解説していきます。

事務所経営白書のデータ、私自身の経験、別の税理士事務所から弊社に転職してくれたスタッフ数名のヒアリング等をもとに、税理士事務所の残業の実態をくわしく調査しました。

 

税理士事務所の繁忙期と「残業の実態」について

 

目 次

1 税理士事務所の繁忙期はいつ?

2 税理士事務所の1人あたり残業時間数

3 過労死ラインを超える残業時間の事務所は?

4 残業が発生する理由(企業の回答)

5 残業が発生する理由(労働者側の回答)

6 税理士業界にホワイト企業は存在するか?

7 ブラックな税理士事務所を避けるために

8 まとめ

 

1 税理士事務所の繁忙期はいつ?

税理士事務所の繁忙期はだいたいどの事務所も12月~3月と5月あたりです。

12月・1月の年末年始は、お客様企業が雇用する全スタッフの所得税を計算する年末調整という作業があります。

資料の収集に始まり、細かな入力・計算・チェックとかなりの作業ボリュームです。

年末調整のほかにも、税務署へ法定調書の提出、市役所への給与支払報告書の提出・償却資産申告書の提出など、この時期を期限とする作業が一気に押し寄せます。

作業を終えると、お客様への報告や手続きの案内までしなくてはなりませんので、お客様と接する担当者もバックオフィスで作業をするスタッフも仕事は山積みです。

 

2月・3月は、3月15日期限の所得税確定申告を提出するために個人事業主の方の作業を急いで進めます。

法人のお客様が多い税理士事務所でも、社長の所得税申告が必要になるケースは多いので、どこも忙しく、この時期は税理士の資格学校も授業を休講にする程です。

3月15日を過ぎても繁忙期は続きます。年末年始からずっと忙しかった煽りで生じた通常業務の遅れを一気に取り戻さなくてはいけません。

 

4月はようやく一息つけますが、続く5月は3月決算法人の申告・納税の時期です。
3月決算の法人は一年で一番多く、しかもそこそこ規模の大きい企業が集まる傾向にあります。

ベテラン社員も皆忙しいので、自分の担当するお客様の申告は限りなく自力でやり切る必要があるでしょう。

 

ここで挙げた繁忙期の具体的な残業時間数のデータは「3 過労死ラインを超える残業時間の事務所割合」で紹介します。

 

2 税理士事務所の1人あたり残業時間数

標準的な月の残業時間数を見てみましょう。まずは企業の回答です。

 

1人あたりの月間残業時間(標準的な月)

(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』P50)

 

正社員の月間残業時間数は、10時間以下が23.0%、10-20時間以下が37.8%、20-30時間以下が28.4%、30-45時間以下が6.8%、45時間超は1.4%という結果です。

企業の回答なので、これより残業時間が少ないことはないでしょう(笑)

 

これが真実かどうか、続いては労働者側の回答を見てみます。グラフは「週間」データで、上のグラフと比較がしづらいので、後ほどまとめます。

 

1人あたりの「週間」残業時間(標準的な週)

(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』P51)

 

正社員の「週間」残業時間数は、残業なしが11.9%、1-3時間が12.4%、3-5時間が7.8%、5-10時間が21.8%、10-20時間が27.6%、20時間超は10.6%という結果です。

週間のデータを4倍し、ざっくりと月単位に直して比較してみましょう。

 

標準的な月の残業時間数について、企業の回答では、月間20時間以下が60.8%。月間20時間超が36.6%です。

これに対して労働者側の回答では、月間20時間以下が32.1%。月間20時間超が60.0%です

月間20時間の残業は、毎日約1時間の残業に相当します。そう考えると、経験上、労働者側の回答が実態に近く、偽りのない数字と言えるでしょう。

 

3 過労死ラインを超える残業時間の事務所は?

では、いよいよ繁忙期の残業時間数を見てみましょう。まずは企業の回答です。

 

1人あたりの月間残業時間(最も多い月)

(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』P50)

 

正社員の月間残業時間数は最も多い月で、10時間以下が12.2%、10-20時間以下が6.8%、20-30時間以下が5.4%、30-45時間以下が10.8%、45-60時間以下が6.8%、60-80時間以下が14.9%、80-100時間以下が17.6%、100時間超は23.0%という結果です。

回答の選択肢が用意されていることがすでに驚きです。労災認定の目安となり「過労死ライン」とされるのは月間80時間なので、企業の回答ですら40.6%が超えています。

 

続いて労働者側の回答を見てみます。グラフは「週間」データで、上のグラフと比較がしづらいので、後ほどまとめます。

 

1人あたりの「週間」残業時間(最も多い週)

(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』P51)

 

正社員の「週間」残業時間数は最も多い月で、残業なしが5.8%、1-3時間が4.8%、3-5時間が6.1%、5-10時間が9.1%、10-20時間が21.8%、20-30時間が18.7%、30時間超は20.5%という結果です。

週間のデータを4倍し、ざっくりと月単位に直して比較してみましょう。

 

繁忙期の残業時間数について、企業の回答では、月間20時間以下が19.0%。20時間-80時間が37.9%。80時間超が40.6%です。

これに対して労働者側の回答では、月間20時間以下が16.7%。20時間-80時間が30.9%。80時間超が39.2%です

1ヶ月は4週間とちょっとありますので、その分を加味すると企業と労働者側でほぼ似たような数字になります。感覚的にも繁忙期にこれぐらい働く事務所は多いでしょう。

月間80時間の残業と言うと、週休2日で計算すると平日は朝9時~22時までみっちり働いていることになります。

ちなみにベンチャーサポート税理士法人の実態は、繁忙期でも最長21時にはオフィスの電気を消して鍵を締めますので、

仮に毎日その門限まで残ったとしても、月間最長残業時間が60時間を超えることは物理的にありません。月間最大残業が42時間を超えないように仕事量を調整しています。数日に限れば、21時帰りの続くスタッフがいるのも事実ですが…(汗)

皆で協力して早く帰れるように改善を続けています。

 

4 残業が発生する理由(企業の回答)

残業が必要となる原因を企業はどう捉えているのでしょうか?

 

所定外労働が発生する理由(企業の回答)

(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』P49)

 

企業の意見では、1位:業務量が多いため55.8%。2位:顧客からの不規則な要望46.8%。3位:仕事の繁閑の差40.3%。4位:人員不足31.2%。5位:納期の要求が厳しい22.1%という結果になりました。

 

5 残業が発生する理由(労働者側の回答)

残業の原因を労働者側はどう捉えているか見てみましょう。

 

所定外労働が発生する理由(労働者側の回答)

(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』P49)

 

労働者側の意見では、1位:突発的な仕事43.5%。2位:人員不足(業務量が多い)39.0%。3位:仕事の繁閑の差38.2%。4位:納期の要求が厳しい31.9%。5位:業務の平準化がされていない13.7%。6位:会議が多い11.9%という結果になりました。

残業の原因は、なんとなく想像はつくものの明快な解決が難しいという理由が多いようです。

 

私見では、業務量が多いことと人員不足については、成長を続けていて健全な黒字経営を維持している事務所で完全な解消は難しいように思います。

もちろん、過度なものはすぐに無くしていくべきですし、業務効率化や、ムダな会議を減らすなどの企業努力はつねに必要でしょう。

 

お客様からの突発的な仕事や短い納期の依頼については、どうしようもない急な仕事はたしかにありますが、お客様との普段のやり取り次第で解消できるものも多いように思います。

作業にかかる時間や対応可能な依頼の線引きをしっかり伝えておくことで、無茶な依頼はされにくくなります。万が一、大変な期限の仕事を引き受けたとしても、それに対してしっかり「感謝してもらう」ことができます。

やって当然のように思われるか、こちらが無理して頑張ったことが伝わっているかは大きな違いです。当然のように感じられていれば、また同じように無茶な依頼をされることは目に見えています。

 

6 税理士業界にホワイト企業は存在するか?

繁忙期の残業時間数を見る限り、多くの税理士事務所でブラックな働き方が横行しているように見えます。

では、税理士業界にホワイト企業は存在しないのでしょうか?

結論として、ホワイト企業は確実に存在します。
しかし、一年中毎日定時で帰れるような事務所はごく少数でしょう。

税理士事務所は、大手も中小規模も、一般企業以上に経営者の意向が大きく反映されます。その経営者の考え方ひとつで、スタッフ全員の働き方が決まります。

なかには残業が一切ない事務所もありますが、高齢の所長税理士がそろそろ引退を考えていて、お客様が極端に減っていたりします。
そういう事務所では、給料が上がらない・仕事の経験値が積めないどころか、引退とともに事務所が廃業して、別の転職先を見つけなければいけないこともあります。

残業時間だけを見極めるのか。その他の要素とのバランスを取るのか。自分にとってのベストな選択を探しましょう。

 

7 ブラックな税理士事務所を避けるために

ブラックな税理士事務所に就職してしまわないための一番良い方法は、その職場で働いている人の話を聞くことです。

知り合いがいない場合の簡単なチェック方法は、平日の夜や土日にオフィスに実際に行ってみて、電気がついているかどうか? 人がいるかどうか? を見てみることでしょう。

 

あとは、採用面接の時に、面接官にストレートに聞いてみたり、自分の希望の働き方を言ってみるのも案外使える方法です。

入社後にミスマッチとなってすぐに退職することは事務所にとっても不幸ですから、意外に正直な返事をもらえる可能性は高いです。

 

8 まとめ

税理士事務所の業界全体の平均残業時間数や、事務所ごとに残業時間が大きく異なることを見てきました。

残業時間、週休2日、年間休日数などは就職する際にとても大事な指標だと思います。

ただ、それ以外にもたくさんの指標があり、すべて自分の思いどおりという事務所はなかなか見当たらないでしょう。見つかったとしても、採用選考に通るかどうかは分かりません。

 

仕事内容、給料の伸びしろ、将来の働き方など、自分が10年後・20年後どういう働き方や私生活を送っていたいのか?

就職活動をするうえでは、自分の将来を長期的にイメージして、今自分が就職する企業に求める「優先的な指標」の順番を決めておくことが重要だと思います。