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従業員数の規模別で見る、士業事務所の特徴について

「士業」と言われる業界では、どれくらいの数の人が働いてるかご存知ですか?

なんと、約25万もの人が士業の業界で働いています。(2016年のデータより)

 

従業員の推移

(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』P15)

 

25万人という数字、なかなかピンとこないかもしれませんが、 たとえば全国のタクシードライバーの数の合計が約17万人(出展:内閣府HP)です。

タクシードライバーの1.5倍近い人が士業の業界で働いているのです。

手を挙げればタクシーより、士業の業界人の方がつかまりやすいかもしれませんね。

 

ですが、「どの士業で働いているか」は大きな違いがあります。

税理士業界が約14万人、弁護士業界が約5万1千人、司法書士業界が約2万6千人、社労士業界が約1万9千人、行政書士業界が約1万3千人となっています。

税理士業界で働く人が全体の半分以上を占め、圧倒的に多いのです。

そうなりますと、1つの事務所ごとの従業員数も税理士が多いのかが気になります。

 

一事務所あたりの従業員数の推移

(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』P15)

 

一事務所あたりの従業員数でみると、税理士は4.94人。だいたい5人前後ということです。

弁護士事務所が1事務所あたり4.34人、社労士事務所が3.19人、司法書士事務所が2.93人、行政書士事務所が1.95人です。

税理士事務所が他士業よりは若干多いとはいえ、数人の差です。

改めて士業というのは零細企業が多いですね。

もちろん、このデータは平均を取ったものなので、もっとたくさんの従業員がいる事務所もあれば、もっと少ない事務所もあります。

ではなぜ、一事務所あたりの従業員はこんなに少ないのでしょうか?

 

これを考えるにあたって前提として知っておきたいことが、「一昔前の士業の集客の仕方」と、「ここ20年の士業の集客の仕方」です。

実は、ある時期まで士業の広告は「自主規制」として広告制限されていました。

制限をしていたのは、国ではなくて、「税理士会」「弁護士会」などの士業の団体です。

つまり自主的に広告を出さないというルールを決めていたのです。

広告が禁止されていると、士業に仕事を依頼したいと考える人がいても情報もありませんし、探し方も限られます。

結局は人に紹介をしてもらって、サービス内容の比較や料金の比較もできずに、言い値での契約となっていました。

ある意味、士業の側に立って考えると集客のしやすい、良い時代でした。

 

これに一石を投じたのが1997年の公正取引委員会の調査です。

公正取引委員会は、司法書士と行政書士の広告規制の実態調査を行い、より消費者が自由な選択ができるように広告や情報を開示することになったのです。

そのあと、2000年に弁護士が、2003年に税理士が広告を自由に出せるようになり、本格的に競争が始まることになりました。

当時はインターネットの初期で、ホームページを作ってインターネットで集客する士業事務所も珍しい時代。

「士業をインターネットで探すような人はいない」と言う先生も多かったようです。

 

あれから20年弱の時の経過を経て、ご存知の通り今はインターネットが集客のメインです。

インターネットへの取り組み方で、大きく成長できた事務所と停滞した事務所に2極化し、一部の事務所では100人を超える従業員が在籍し、多くの事務所では従来のまま「2人~5人」の規模になっているのです。

 

税理士事務所の従業員規模

(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』P26)

 

税理士業界では、「1人~4人」の事務所が63%、「5人~9人」の事務所が27%。全体の90%が10人未満の事務所です。

逆に50人以上の事務所は0.18%となっています。

 

社労士事務所の従業員規模

(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』P27)

 

社労士業界ではもっと規模による差があり、「1人~4人」の事務所が80%、「5人~9人」の事務所が15%。なんと全体の95%が10人未満です。

50人以上の事務所は0.03%。

圧倒的に規模の小さい事務所が多いことがわかると思います。

このように士業業界では大半の事務所が少人数の事務所で、一部に規模の大きい事務所があることがわかると思います。

 

ここまでで、「士業全体で働く人の数」「各士業ごとの働く数」「1つの士業事務所ごとの従業員数」について見てきました。

この情報を活かして、就職活動をする際に、規模についてどう考えるべきかを述べたいと思います。

私は規模の大きい事務所も小さい事務所も経験をして、それぞれに良さがあると思っています。

規模の大きい事務所は経験できる仕事が多く、給料も上がりやすい。

また組織として仕事をするので、リーダーとしてのチームの率い方や、仕事の管理の仕方などを学べます。

こういった体験は、お客さんである中小企業の社長との話合いのなかでも役立つノウハウです。

会社としての安定感もあるため、ずっと働くには良い環境でしょう。

 

小さい事務所は代表税理士との距離が近く、自分が独立をした時のイメージが付きやすい。

小さい事務所ならではの経営の方法が学べるので、独立志向の人には勉強になることが多いでしょう。

実際、今独立をしたとしても、インターネットで集客をすることはコスト面から考えても厳しいと言わざるを得ません。

大手では集客方法が確立されているため、インターネット以外の方法も含めてなかなか真似できないのが実際のところです。

独立志向のある人は、異業種交流会や経営者同士の飲み会など、コストを掛けずに集客するノウハウを身に付ける必要があります。

小さい事務所で自分に合った集客方法を学ぶことは大きな財産になります。

また求人においても、待遇などではどうしても大手に見劣りしがちです。

そのなかで、いかに働き甲斐やアットホームな雰囲気を武器にして、良い人を育てるか。

これも事務所運営の大きなノウハウです。

 

小さい事務所ではどうしても代表の先生の色が強く出るため独特な雰囲気の事務所もあるようですが、反面教師になるようなことも含めて学べることはたくさんあります。

私自身が就職活動をしているときには、こういった従業員数のデータは知らなかったのですが、知っていれば今の自分にはどういった事務所が合っているかの判断基準になったと思います。

ぜひ活用してみてください。