この記事でわかること
- 税理士事務所の採用担当者が知りたがっていることについて理解できる
- 税理士事務所に応募する際の書類作成が自分でできる
- 税理士事務所に職務経歴でアピールする方法がわかる
税理士事務所に就職したい時、職務経歴書の書き方にはひと工夫必要です。
どのような点で工夫が必要になるのでしょうか。
今回は、税理士事務所の採用担当者に響く、職務経歴書の書き方についてご紹介します。
職務経歴書に盛り込みたい項目とは
職務経歴書は、ただ自分がどこの会社に勤めていたのかを書けば良いというものではありません。
結局のところ、職務経歴書を採用担当者が見て、自分の事務所に欲しい人材であるかどうかを判断する材料になるのですから、採用担当者に「ぜひともうちの事務所に来て欲しい」と思わせる人材であることをアピールする必要があります。
と言っても、採用担当者から「このような人材が欲しいです」と詳細に教えてもらえることはありません。
基本的に、求人の内容をまずよく読み込むことが重要です。
一般的に、職務経歴書に盛り込む内容は以下の通りです。全体として、A4サイズの紙3枚程度に収まるようにします。
- 職務経歴概要
- 職務経歴の詳細
- 職務内容(一般業務と特殊業務)
- 略歴
- 実績
- 資格や免許、スキルなど
- 自己PR
- 特記事項(離職の理由など)
それでは、具体的に書き方を見ていきましょう。
書き方のポイント
書き方のポイントを項目ごとに見ていきましょう。
よく考えて一回で完成させようとするのではなく、まずは一度書いてみてからじっくり推敲するほうが良いものができます。
採用担当者としては、応募してくる人にどのような得意分野があって、それは事務所にとってプラスなのか、必要な能力なのかということを知りたがっています。
即戦力として税務に詳しい人が欲しい場合もあれば、異分野への進出を考えているので税務のバックグラウンドがむしろないほうがいいと思っている場合など、欲しい人材像は様々です。
職務経歴概要は短く簡潔にまとめる
最初の職務経歴概要の部分です。
概要なので、全体の要約部分に当たります。
自分が今までに何をして来たのかを、ざっくりと2、3行にまとめます。
できるだけ興味をもってもらえるように、ただ事実を書くのではなく、転職先の仕事内容と共通する部分が少しでもあれば強調して書くようにしましょう。
職務経歴の詳細
職務経歴の細かいところを書いていきます。
いつからいつまで、どこに勤務していたのか、勤務先のデータ(従業員数など)を記載してください。
この部分を読めば、どの程度の大きさの組織で働いていたのかがわかります。
職務内容(一般業務と特殊業務)
一般的な業務と、スポット的に発生する特殊業務について書いてください。
たとえば、顧問先を訪問したり、経営アドバイスをするのは一般業務に当たります。
一方で、相続税申告や事業承継など普段あまり起こらない業務を経験した場合は、特殊業務に記載します。
転職先がこの特殊業務を専門的に扱う事務所などであれば、より詳しく書くようにしましょう。
略歴
前職も含めて、簡単な略歴を記載します。
いつに入職して、昇格したかなど、簡単に記載します。
履歴書をセットで提出することが多いと思われるので、略歴は簡潔にわかるように書いてあれば大丈夫です。
実績
ここでいう実績は、基本的には「会社の収益にどう貢献できたか?」もしくは「業務経験をどれだけこなしたか?」という視点での実績を書くのが望ましいです。
例えば、「自分の知人の紹介から新規顧客を◯件獲得した」「法人の決算書・申告書の作成補助業務を毎月◯件以上◯ヶ月経験した」など、数字でわかるように書くといいでしょう。
資格や免許、スキルなど
税理士事務所の場合は、簿記会計に関する知識が重要ですので、簿記会計関連の資格があれば必ず書いてください。
税理士試験のうち、科目合格があれば記載しましょう。
簿記資格も税理士の科目合格も、仮に合格の結果がない場合でも空欄にするよりは受験経験として、記載しておくことをお薦めします。
また、会計ソフト・申告ソフトを使った経験がある場合は、ソフト名を書いておくと、採用担当者にアピールできます。
他には、外国語ができる場合は、外国語についてどの程度できるのか、資格試験に合格していればその内容も記載してください。
自己PR
自分の売りになる部分を書きます。
業務経験や知識を前面に出す必要はなく、人柄などを記載しても良いです。この時も、まったく関係ない個性を書くよりも、どんな時に仕事のやりがいを感じるか、モチベーションが沸くのはどんな時かといったなるべく前向きな情報を記載しましょう。
特記事項(離職の理由など)
なぜ前職を辞めてしまったのか、という部分については気になる採用担当者が多いです。
退職の本音としてネガティブな理由もあるとは思いますが、ここでは前向きな理由だけを並べるようにしましょう。
大事なのは、ウソを書くのではなく、本当のことのうち前向きな理由だけを書くということです。
たとえば「前職では経験できない◯◯の業務に挑戦しようと思ったため」などとしてください。
家族を世話するために辞めたような場合は、「育児との両立を図るため一旦退職」「介護をするため退職」という理由とともに、その状況が今は完全に改善されたという旨も記載しましょう。
具体的な職務経歴書サンプル
具体的な職務経歴書のサンプルをご紹介します。
税理士業界の中で転職をする場合と、別の業界から応募する場合の2通りに分けましたので、参考にしてください。
税理士業界の中で転職する場合
- 職務経歴概要
大学に在学中に、税理士試験に3科目合格。大手税理士事務所にて、税理士の補助業務を5年間経験し、クライアントの訪問、経営コンサルティングを行ったほか、企業合併の税務などを担当。大手税理士事務所への勤務期間中に、税理士試験に合格。
- 職務経歴の詳細
〇〇税理士法人 XXXX年XX月〜XXXX年XX月まで勤務
概要:税理士〇名、会計士〇名、スタッフ〇名
雇用形態:正社員
使用会計ソフト:〇〇〇〇〇担当顧客について
① 法人:〇社
(当時の顧客について、規模の大きい順に列挙します。)
② 個人:〇名
(個人情報に当たるので、細かいことは書く必要はありません。業種程度で良いでしょう。) - 職務内容(一般業務と特殊業務)
一般業務
クライアントの訪問:クライアントを1ヶ月に1回程度訪問し、記帳に関する疑問や質問などに答えた。
経営コンサルティング業務:補助金や助成制度を使った経営コンサルティング業務を行った。当時の勤務先である〇〇税理士法人が力を入れていた分野だったので、新しい補助金や助成金の情報が出ると、クライアントに随時共有し、定期訪問時に補助金や助成制度を活用した経営計画を提案した。特殊業務
企業合併:クライアントが他の企業と〇〇年〇月に合併。合併に必要な税務コンサルティングなどを行った。 - 略歴
XXXX年XX月 〇〇大学を卒業(在学中に税理士試験3科目合格)
XXXX年XX月 〇〇税理士法人に税理士補助として入所
XXXX年XX月 税理士試験最終合格
XXXX年XX月 チームリーダーに昇格
XXXX年XX月 スキルアップのため退職 - 実績
XXXX年XX月、1ヶ月に10社の新規顧問先を開拓。社内で表彰されたことがある。
- 資格や免許、スキルなど
日商簿記検定1級、税理士試験(簿記論、財務諸表論、消費税法)合格
- 自己PR
誰とでもすぐに打ち解ける性格です。経営者の悩みや不安を引き出し、案件の成約へとつなげることが得意です。
- 特記事項(離職の理由など)
前職はスキルアップのため退職しました。今後は◯◯の業務を経験し、専門家としての自分の仕事の幅を広げて、お客様に頼られる存在になれるよう成長していきたいです。
他の業界から転職してくる場合
- 職務経歴概要
IT企業に、システムエンジニアとして6年間勤務。プログラミング業務のほか、会計システムの開発などを経て、会計職に転職したいと考えるようになった。IT分野での経験が長いため、システムに関することであれば、全般的に知識があり、小規模な会社のシステムの改修なども可能。
- 職務経歴の詳細
プログラミング:入社から3年間はプログラマーとして様々なソフトの部品に当たる部分を開発した。
会計システムの開発:とある会社で使用する会計システムの開発に携わった。使いやすい会計システムを作ることを目標に、税理士の先生がたと協力してシステムを作り上げることができた。 - 職務内容(一般業務と特殊業務)
一般業務
日々の業務報告や、開発に関係するミーティングなど。特殊業務
社内システムの改修、後輩の指導育成。 - 略歴
XXXX年XX月 〇〇大学を卒業
XXXX年XX月 株式会社〇〇〇〇〇に入社
XXXX年XX月 社内開発コンテストで優勝
XXXX年XX月 チームリーダーに昇格
XXXX年XX月 転職のため退職 - 実績
社内開発コンテストで優勝
- 資格や免許、スキルなど
システム開発系の資格多数。
海外に駐在経験があるので、日常会話程度の英語と中国語ができる。 - 自己PR
細かいことでも集中してやり遂げることができます。会計分野でも、今後ITとの融合が進んでいくと思われます。私はもともとエンジニアとしてIT業界に長くいたので、ITに関する知識を会計分野でも生かしていきたいと思います。
- 特記事項(離職の理由など)
会計システムの開発にあたって、税理士という職業に触れ、お客様と会って役に立つ提案をして直接感謝してもらえる仕事に魅力を感じて転職を決意しました。
まとめ
今回は、税理士事務所に応募する際の職務経歴書について書き方をご紹介しました。
長く細かく書くよりも、必要なことを簡潔に書いた方が採用担当者も読みやすいでしょう。
目立つ経歴がないように思えても、これまでに頑張ってきたことを書きましょう。
採用担当者は、応募者の熱意も見ています。
何を伝えたいのか、伝わるように書けているのか、よく考えて書いてください。
可能であれば、誰か他の人に一度読んでもらって、意味の通る文面になっているか確認してもらってください。
また、下記の記事では「就職・転職を避けるべき税理士事務所を見つける」という視点から税理士事務所の求人の見極め方をお伝えしています。興味のある方は参考にしてみてください。