この記事でわかること
前回は、税理士試験の税法科目のうち実務で役立つ税法科目は何か?をお伝えしました。
今回は、同じ税法科目の選択でも、目線を変えて合格しやすいオススメ税法科目の選び方についてお伝えしていきます!
1.税理士試験の概要
税理士試験は、全部で11科目ある試験科目のなかから、自分で選んで、合計5科目に合格すれば、税理士になる資格を得ることができます。
そのうち、簿記論と財務諸表論は必須科目なので、残り3つの税法科目の選択について考えてみます。
また法人税法か所得税法のどちらか1つは必ず合格しないといけませんので、どちらかは選びます。
今回、僕だけの意見ではなくて税理士試験に5科目合格した会社のスタッフ4人と一緒に
もう一度、ゼロから税理士試験を受けるとしたらどの税法科目を選ぶか?
逆に、二度と受験したくないのはどの税法科目か?
などと意見を出し合って決めていきました!実際に税法科目を受験し、合格したメンバーで話し合ったので、税理士試験受験生のみなさんの参考になると思います!
2.必要学習時間の目安
どの税法科目が合格しやすいか?を語る前にかならず確認しておかないといけないのが、合格に必要な学習時間数です。
学習時間数は、資格専門学校のホームページや、資格本などにも記載されていますが、某有名専門学校のホームページによると下記の数字です。
税法科目 |
学習時間数 |
法人税・所得税 |
600時間 |
相続税 |
450時間 |
消費税 |
350時間 |
固定資産税 |
250時間 |
事業税・住民税 |
200時間 |
酒税・国税徴収法 |
150時間 |
ただし、税法理論の暗記にかかる時間差は個人差があるため、ここには含まれていないと書かれていました。
めちゃくちゃ短いですよね!?
僕自身の話しで言うと、初めての理論の見開き1ページ分を覚えるのに、3時間とかでは全然足りませんでしたので、この時間数プラス数百時間はゆうにかかると思います。
他の合格者たちに聞いても、早すぎてありえない!という感想ですので、こんなに早く終わると思わないほうが良いですし、これ以上時間がかかっているからと言って、落ち込む必要もありませんので、ご安心ください(笑)
我々の中に、酒税法の受験経験者だけはいなかったので、それ以外の税法科目について必要学習時間数を自分たちで考えてみました!
その結果、理論暗記や自習時間などすべて含めて、合格できる可能性がある状態にもっていくためには、だいたいこのぐらいの時間数がかかるだろうという結論になりました。
税法科目 |
学習時間数 |
法人税・所得税 |
1600時間 |
相続税 |
1300時間 |
消費税 |
1100時間 |
固定資産税 |
1000時間 |
事業税・住民税・国税徴収法 |
900時間 |
かなりリアルな数字だと思いますが、ケアレスミスなどで不合格が続いてしまったりすると、記憶を維持するために余分な時間数がかかることは大いにありえます。
このあとに科目別の合格率を比較しますが、合格率を比べる前提にはこの必要学習時間数がある、ということは覚えておいてください!
3.科目別合格率の推移
|
令和2年度 |
令和元年度 |
平成30年度 |
平成29年度 |
平成28年度 |
所得税法 |
12.0% |
12.8% |
12.3% |
13.0% |
13.4% |
法人税法 |
16.1% |
14.7% |
11.6% |
12.1% |
11.6% |
相続税法 |
10.6% |
11.7% |
11.7% |
12.1% |
12.5% |
消費税法 |
12.5% |
11.9% |
10.6% |
13.3% |
13.0% |
酒税法 |
13.9% |
12.4% |
12.8% |
12.2% |
12.6% |
国税徴収法 |
12.2% |
12.7% |
10.7% |
11.6% |
11.5% |
住民税 |
18.1% |
19.0% |
13.5% |
14.3% |
11.7% |
事業税 |
13.1% |
14.8% |
11.0% |
11.9% |
12.9% |
固定資産税 |
13.5% |
13.7% |
14.9% |
13.3% |
14.6% |
合計 |
17.3% |
15.5% |
12.8% |
17.0% |
13.2% |
つづいて、税法科目の合格率を見ていきます。
以前、税理士試験は、各科目の合格率が約10%と紹介されることも多かったですが、最近は合格率が高くなる年もあり、令和2年度の各試験科目の合格率合計は17%を超えました。
この合格率は毎年けっこう変わるのですが、試験科目ごとに、合格率が高めの科目と、低めの科目があります!
税法でもっとも合格率の高い住民税はここ2年つづけて18%超、固定資産税はここ5年間安定して13%を超えています。
逆に、所得税法、相続税法、消費税法、国税徴収法などは、ここ3年、13%を超えた年が一度もなく、低い合格率が続いています。
さて、これを見てちょっと考えて欲しいのですが、合格しやすい科目とは、この合格率が高い科目なのでしょうか?
もうちょっと考えると、さきほど、この合格率で勝負するための必要学習時間数も確認しました。
では、必要学習時間数がなるべく短くて、合格率がなるべく高い科目を選べばいいのでしょうか?
僕たち税理士試験経験者の結論は、そうではありません!
4.合格率では見えない運要素
必要学習時間数と合格率、それ以外に意識してほしいことは、運要素の高さです。
運要素の高さとは、分かりやすく言うと、専門学校の全国統一 模試で1位を取った人が、本試験でも合格する確率、というイメージです。
実力どおりに順位がでやすいか、試験問題ごとに順位がころころ変わるか?それは税法科目によって差があります。
本試験で、1つポカミスをやらかしてしまったときに、それだけで不合格になってしまう科目は運要素が高く、他の問題で高得点を取れば、そのミスをリカバリーできる科目は運要素が低いといえます。
運要素が高い科目は、計算が満点勝負になりやすい、必要学習時間数が少ない、受験者数が少ないという特徴があります。
ずばり、固定資産税、住民税、事業税の3つは運要素が高いと言えます。
国税徴収法は計算問題がなく、すべて理論問題のため、ひとつのミスが致命的になるという結果にはなりにくい科目です。
運要素の高い科目が良いか、低い科目が良いかは、その人の考え方や状況によって違います。
たとえば働きながらの受験で、どうしても一年間の学習時間が500時間以下しか取れない状況なら、運要素の高い科目で勝負するのもありですし、
受験専念している方が、専念している間にどうしても科目合格を増やしたいということなら、運要素の低い科目に充分な学習時間をかけて、合格率を高めていく方法がいいでしょう!
5.ライバルのレベルの高さ
合格率、必要学習時間数、運要素の高さ、これ以外にも気にすべき大事な要素があります。
それは、同じ税理士受験生、つまりライバルのレベルの高さです。
ライバルのレベルの高さをどう比べるかというと、受験専念している人の割合、複数科目受験している人の割合、税法の受験慣れしている人の割合、の3つを、推測します。
受験専念している人が多い科目は、働きながら受験する社会人にとっては不利になります。
次に、その年メインで学習する税法ではなく、2科目め、3科目めのおまけとして同時受験されるような税法は、ライバルの本気度が落ちるのでレベルはすこし低くなります。
そして、3科目・4科目もった受験生が最後のほうに受ける税法科目は、合格の仕方をわかっている受験生が多いため、ライバルのレベルが高くなります。
税理士の科目合格というのはだいたい、この順番で合格する人が多いという、王道のステップがあります。そこから、ライバル受験生のレベルを推測していくのです。
6.合格を最優先したオススメ税法科目
合格率、必要学習時間数、運要素の高さ、ライバルのレベルの高さ。
これらを見比べて、合格まで最短のオススメ税法科目を選んでいきましょう!
まず、法人税法と所得税法ですが、ずばり、法人税法のほうが合格に近い選択といえるでしょう!
理由は2つ。
1つめはここ2年の合格率が所得税法より高まっていることです。
しかし、合格率は来年には逆転しているかもしれませんので、確実な理由にはなりません。
2つめの理由は、ライバルのレベルが法人税法のほうが低いということです。
所得税法を受ける人のなかには、法人税法をすでに合格していて、国税3法に受かりたいからとあえて学習ボリュームの多い所得税を選んできている人が一定数います。
しかし、その逆に、所得税法に合格しているのに、さらに法人税を受けよう!という人は、どう考えても少数派です。
学習ボリュームが多い税法科目に自ら飛び込んでくるライバルは受験専念生の可能性も高く、なるべくなら避けたほうが良いでしょう。
では、残り2つの税法です。
1つ、どうしても選んだほうが良いと思うのが、消費税法です。
受験専念生が選ぶことも多い税法ではありますが、仮に受験専念生の場合、消費税1つだけを受験するということはあまりありません。
複数科目の受験が多いこと、簿財を終えてすぐ、という税法受験の初心者が集まる傾向にあること、必要な学習時間が少なめであること、受験者数が多いので運要素が低めであることなどが消費税法をオススメする理由です。
実務に役立つ税法ランキングでも1位に輝いた消費税法ですから、受験して損はないと思います!
最後の1つの科目選びですが、消費税を選んだため、酒税法は選べません。
相続税法、国税徴収法、住民税、事業税、固定資産税の5つから選ぶことになります。
この中で、合格率が毎年低めで、必要学習時間も多く、メインの税法にも選ばれやすい相続税法は、合格を優先するうえでは、避けたほうが無難でしょう。
ほかの4つの税法科目は、特徴はだいたい似ているのですが、国税徴収法だけ計算問題がないため、運要素が低めといえます。
受験者数で見ても、国税徴収法は固定資産税の約2倍、住民税や事業税と比べると4倍以上の人数で、これも運要素を減らしてくれます。
以上より、合格しやすいオススメの税法科目は、法人税法、消費税法、国税徴収法というのが結論です。
これが、5人で意見交換して導いた結果ですが、僕自身は、所得税に合格したあとで、住民税を働きながら2年かけて取りました。
学習内容のかぶりが多く、ストレスのない2年でした。理論暗記の題数も10題ちょっとでしたので、運要素の高さというマイナス要素はありつつも、所得税を合格した人には、個人的にぜひ住民税もオススメしたい科目です。