こんにちは!ベンチャーサポート税理士法人の古尾谷です。
今回は税理士事務所の仕事についてみていきます。
税理士事務所って何をしてるのでしょうか?
税理士業界未経験の人は、当然ご存じないですし、
意外とオープンになっておらずイメージが付きにくいと思います。
広いテーマなので、このサイトでも何度も色々な視点からご説明をしていきますね。
今回は、大枠での「税理士事務所の仕事」について紹介します。
少し業界のことを知っておられる方が持つ税理士事務所の仕事のイメージとしては、
「会計ソフトにデータを入力して、法人税や所得税の税金の計算をして、税金の相談に答える」
という感じでしょうか?
私自身、税理士業界に初めて就職するときは、全く仕事のイメージが付いていませんでした。
「税理士専門学校で習った知識を使うのでしょ?」くらいの感覚です。
確かに知識はあった方が良いに決まってますが、実際に現場で手を動かす内容は学校では習わない知識ばかりです。
非常にざっくり大枠のイメージを伝えますと、
①クライアントの会計資料(レシートや通帳や請求書など)を預かる。
②会計資料を見ながら、仕訳を会計ソフトへ入力する。
③1ヶ月の試算表(貸借対照表と損益計算書のこと)を完成させ、社長に実績の報告をする。
④①~③を毎月繰り返し、1年経ったら決算を行う。
この繰り返しが仕事の8割を占めます。
請求書の見方などは専門学校で習わないので、「どの金額が売上?」「いつの日付で発生?」などの見方から学ばないといけません。
今でも覚えていますが、私が初めて現場に出たときに請求書が「売上になる請求書」か「仕入になる請求書」かすらわからなかったことを覚えています。
もちろん会計ソフトの入力方法も知りませんでした。
未経験の方の場合、①と②を身に付くまで徹底的に訓練します。
そして徐々に④の決算の作業の補助を覚えていきます。
この一連の繰り返しが税理士事務所のメイン業務ですが、実際にはもっともっと多岐にわたります。
給与計算をしたり、税務調査に立ち会ったり、登記業務が発生すれば司法書士に繋いだり、社会保険の業務を社会保険労務士に繋いだり・・・。
とにかく中小企業の社長が感じる「面倒な作業」全般の相談を受けると思ってください。
実際には登記など司法書士でしかできない仕事もありますが、作業そのものをしなくても、知識としては知っておくことが望ましいです。
なぜなら中小企業の社長は「何がどの士業の専門か?」は知らないことが多いからです。
たくさんの士業の中でも、毎月のように社長と会うのは税理士くらいです。
社長にとって、もっとも身近な法律の専門家が税理士なのです。
ですので、社長はいろいろな質問を税理士にしてきます。
社長の頼りになるパートナーになるためには、会計や税金だけではなく、幅広い知識が求められるとお考えください。
またこういった知識面だけはなく、経営上の社長の困った問題やプライベートの相談まで、なんでも親身に相談にのることも大事です。
決算書からお金から全てをさらけ出す税理士という仕事は、社長にとってなんでも相談できる相談相手になります。
そしてこれこそが税理士の仕事の醍醐味とお考えください。
税理士事務所の仕事は、税金の計算であることはもちろんです。
ですが、経営者からすると毎月会う法律の専門家としての役割を望まれます。
労務や会社法の一般的な知識を持ち、またそれらの専門家に繋げる人脈が必要です。
そして銀行通帳などの個人情報を全て教えてもらうのが税理士です。
資金ぐりの相談はもちろん、個人的な悩みまで、どんなことでも相談相手になれることが、
頼りになる税理士の条件であり、これが税理士事務所の仕事の魅力なのです。
経理の基本である「簿記」について
会計事務所では業務としての「簿記」をどのようにしているのでしょうか?
実は、簿記論や簿記検定で学ぶような手書きの仕訳や帳面作成は、現場では滅多に行いません。
ほとんどの税理士事務所では「会計ソフト」を使って簿記を行います。
会計ソフトは本当に便利なものです。
私が初めて会計事務所に勤めた時(もう10年以上も前ですが・・)、
こんな便利なものがあるのかと感激をしました。
もちろんですが、自動で集計しますので貸借は自動で一致しますし、
入力も簡単です。
今までの辛い勉強はいったい何に役立つの?と思ったくらいです。
会計ソフトはたくさん種類があり、事務所によって導入しているソフトは違います。
通常、所長税理士が独立前に使っていた会計ソフトをそのまま使うことが多いようです。
とはいえ、最近は安い会計ソフトやクラウドで使える会計ソフトも出てきているため、若手の税理士は積極的に新しい会計ソフトを探しています。
有名な会計ソフトとしては、
・弥生会計
・JDL
・TKC
などがあります。
弥生会計などはネットで無料お試しダウンロードもできます。
税理士試験の勉強の気分転換に、「税理士事務所で働いたらこんなソフトを使うのかー」というイメージを持ってみてはいかがですか?
さて少し現場のイメージもお伝えしましょう。
会計事務所の職員は、レシートや通帳や伝票などの会計資料を見て会計ソフトに仕訳を入れます。
たとえば事務所の家賃10万円を普通預金から支払っていれば、
地代家賃 100,000/普通預金 100,000
と言った具合です。
現場では簿記で学ぶような難しい仕訳は滅多になく、逆に簿記では目にしないような
「消耗品費」「新聞図書費」「福利厚生費」「雑費」などがたくさん出て来ます。
こういった仕訳を入力すると、会計ソフトが自動的に集計をするので、試算表や決算書などは自動作成されるという仕組みになっています。
ちなみにこの入力作業を会計業界では「記帳代行」と言い、記帳代行をお客さんにやってもらうことを「自計化」と言います。
最近は会計ソフトが使いやすくなったことから、社長の奥さんが自分でデータ入力を行うケースも増えています。
「会計ソフトの使い方」を教えるもの会計事務所の仕事です。
このように時代的には手書きの簿記が消えてしまって、
勉強の成果を発揮する機会が減ったように思えますが、
いくら会計ソフトが便利になったとはいえ、簿記の知識が必要ないわけではありません。
会計の知識がないと「なぜこの入力をするのか?」や「会計の流れ」がわからないからです。
また少し特殊な会計処理が出てきたときに対応できなくなります。
今、簿記論を学んでおられる方は、その勉強が必ず実務で役立ちます。
がんばってください!
会計ソフトがドンドン発展し、簿記そのものの知識は徐々に仕事で活用する機会が減ってます。
とは言え、ベースとなる簿記の基礎知識がないと薄っぺらい仕事しかできません。
ちょっと特殊な処理が出た場合に立ちどころに対応ができなくなります。
また税理士としてクライアントに会計ソフトの使い方を教えることも不安になります。
今、簿記の勉強をしてる方はそれが実務でも役立つと考えて、
しっかり勉強を進めてください。
税理士が現場で使う「税金の知識」
まさに税理士の本領発揮の場所です。
どんな税金の知識が必要なのかを大枠でお伝えします。
ご存知のように税金の種類は非常にたくさんあります。
法人税や所得税、消費税、相続税と言った「国税4法」と言われるものから、固定資産税や事業税、住民税などの地方税、さらにはガソリン税、ゴルフ場利用税、入湯税など。
これら全部を知っておくことは至難ですし、実際に税理士事務所の現場ではすべての税金の知識を使うわけではありません。
メインで取り扱う税金は
・ 法人税
・ 所得税
・ 消費税
・ 相続税
・ 印紙税
の5つです。
印紙税が入ってるのは意外かもしれません。
税理士試験では印紙税の試験科目が存在しませんが、
実務では相談が頻出する税金です。
社長から「こんな契約書を結ぶんだけど、印紙は何円のものを貼れば良いのかな?」と言った具合で質問をされます。
契約書の内容ごとに貼るべき印紙の金額は変わりますし、その判定の仕方もなかなか複雑なので、誰しもが一度は必ずぶち当たる壁ですね。
この5つの税金に続くのが
・ 事業税
・ 住民税
・ 固定資産税
でしょうか。
事業税と法人住民税は実務では「申告ソフト」と呼ばれる、法人税を計算するソフトが自動的に計算をします。
個人住民税は「年末調整」という作業を済ませて、その内容を市役所に報告書を出せば、市役所が自動で計算をしてきます。
事業税や住民税はなかなか現場で扱うことの少ない税金ですが、資本金が1億円を超えている会社にかかる法人事業税の外形標準課税や、最近流行している「ふるさと納税」などで忘れたころに必要になったりします。
固定資産税を計算するということは現場ではまず皆無です。
僕も税理士試験では固定資産税を合格してるのですが、使う機会が無くて残念です(笑)
とはいえ、償却資産がある法人は毎年1月に償却資産税の申告書を作成しなければいけませんし、学んだことは必ず役立つときがあります。
実務の現場では、これらの地方税よりも社会保険の知識の方が優先順位は上です。
社会保険といえば社会保険労務士が専門家ですが、税理士も社会保険の知識は必須です。
経営者からすれば国に納めるものは税金でも社会保険でも同じようなもの、と思ってます。
そして意外に思われる方も多いかもしれませんが、「国税徴収法」の知識は、しばしば必要になります。
たとえば、クライアントから「得意先が倒産したんだけど、売掛金は回収できるかな?税金の滞納があったみたいだけど・・」のような相談を受けた時。
こういったときに必要となるのが国税徴収法だったりするのです。
いろいろな知識を身に付けて、顧問先から相談を受けたときには、専門用語を使わずに簡易な言葉でわかりやすく説明する。
それが税理士の税務相談と思ってください。
覚える知識は大量ですし、当然税理士試験で選択をしなかった科目の知識も必要になります。
日々勉強して、日々成長する仕事が税理士業です。
税理士試験に試験科目として存在していて、実務で全く使わないというものはありません。
かならずどこかで役立ちます。
それ以上に社会保険や印紙税など試験にない知識が必要となるのが税理士です。
常に自分の知識を増やすよう、実務に着いてからもがんばりましょう。
新人が最初にする仕事「記帳代行」って何?
業界未経験の方が入社すれば、どこの事務所でもまず取り組む「記帳代行」という仕事について少し詳しくご説明をします。
記帳代行というのは、簡単に言うとクライアントから預かった会計資料を整理して、その内容を会計ソフトへ入力する作業のことです。
(会計資料と言うのは、レシートや通帳のコピーやクレジットカードの明細や請求書などのことです。)
入所したばかりの新人は、いくら優秀な人であっても、又は税理士試験の科目合格者であっても、最初はみんな記帳代行からです。
正直、「地味」な仕事です。
ですが、これが税理士事務所の仕事の中でも大半を占める業務であり、税理士業務の基本中の基本なのです。
野球選手で例えるならば「素振り」のようなものです。
クライアントから1ヶ月分の会計資料が月初になると郵送されてきます。
封筒を開けるとレシートなどがドサッと入ってたりします。
まずはこのレシートなどの資料の整理からです。
向きを揃えたり紙に貼ったり穴を空けてファイリングをしたり。
整理が終われば会計ソフトへのデータ入力です。
「○月○日に○○電機で5万円のプリンターを買ったレシートか。じゃあ消耗品費に○月○日の日付で50,000と入力して・・・」と言った感じで一つ一つの取引を入力していきます。
この作業が地味に大変です。
最初は「何の勘定科目で処理をしたらいいのか?」がわかりません。
さらに見慣れない請求書などが入ってると、どの金額を入力していいのかわかりません。
車を売却した取引などイレギュラーな取引をどう入力していいのかわかりません。
海外取引などが混じってたら更にわかりません。
もうわからないことだらけです!
これを一瞬で正しい判断ができるようになるまで、訓練を続けるのが仕事の基本です。
私自身、新人のときは半年間ほど毎日ずっとこの作業をしました。
しかし、この会計ソフトの入力と言うのは、ものすごく奥が深い作業です。
正確性とスピードが両方求められます。
万一ミスをしてしまってそれがチェックをすり抜けてしまうと、そのまま決算に組み込まれてしまいます。
そうすると税金を納めすぎになったり、逆に納め漏れになったりするのです。
税金の納め漏れは、だいたい税務調査で判明します。
税務調査というのは、税務署が数年に一回、会社の経理が適正かどうかを監査しにくることです。
このときに、自分の入力ミスでクライアントに追加の税金を納めてもらうことになることほど、会計人として恥ずかしいことはありません。
当然クライアントの信頼も一気に失います。
それだけ日々の仕事が真剣勝負だということを意識すべきです。
またスピードが遅いとドンドン仕事が溜まっていき、先輩の担当者に迷惑を掛けることになります。
特に申告月に近くなると申告期限が迫ってきますので、のんびり作業をしていては申告期限に間に合わなくなります。
また銀行融資を受けるために急ぎで処理をしないといけないときなどもあります。
正確かつスピーディーに処理ができるようになるのは大変です。
でも、楽しいこともたくさんあります。
今まで学校で習っていた知識が現場でこのように活きるのか、というのを理解できたときは嬉しくなります。
また数字がピタッと合ったときの快感は会計人ならみんなが持っている体験です。
単純作業の中にも学びはたくさんあります。
楽しみながら頑張っていきましょう!
記帳代行は全ての人が通る道であり、最初の試練です。
単純作業と思うか、学びの場と考えて楽しめるかはあなた次第。
税理士業務の基本なので、しっかり身に付けてください。
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